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「学習」とは?|『学習する組織』をわかりやすく解説

「学習」という言葉を聞くと、どのようなイメージを持ちますか。暗記することや正解を探すこと、先生の話を聞くことを想像する方は多いのではないでしょうか。

実は『学習する組織』では、これらのイメージとは大きく違う捉え方をしています。「学習」とは、一体どのような意味なのでしょうか。

この記事では、私たちが「学習」する場面を例に挙げながら、『学習する組織』の著者であるピーター・センゲ氏が説明する「学習」の意味をご紹介していきます。

学習は、私たちの望みから起こる

2本の足で立って歩いている人が目の前にいるとします。その人は生まれた直後に歩くことが出来たでしょうか。もちろん歩けるはずがありません。きっと、気づいたときには歩けるようになっていたでしょう。

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私たちは生活の中で、自然と多くのことを学んできているのです。「学習」は、相手の話を聞いて頭に情報を入れることだけではありません。出来るようになりたいという思いを持ち、実践を続けてきた。その過程が「学習」なのです。

では、「学習」が起きるために必要なものとは何でしょうか。先ほどの例で言うと、なぜその人は歩くことを学んだのでしょうか。

まだ歩くことが出来ない頃、きっと歩いた先に望むものがあったのだと思います。遠くに母親がいたのかもしれません。そこまで行きたいと思ったとき、人は学び始めるのです。

実践することで、人は学ぶ

私たちは「学習」する前に、必ず望むものであるビジョン(what I want)を持っています。ビジョンがあるとき、それを学ぶ方法はただ一つ。本を読むことでもなければ人から話を聞くことでもなく、実際にやってみること(we learn dy doing)なのです。

もし5歳の子どもが「本を5冊も読んだから、自転車の乗り方はもう学んだよ」と言っていたら、あなたはどう思うでしょうか。「まずは乗ってみよう」と言いたくなるものです。「学習」はビジョンによって起こり、実践によってビジョンが実現していくのです。

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「学習」が起きるには、ビジョンと実践以外にもう一つ必要なものがあります。私たちは家族や友達など、人との繋がりの中で「学習」をしています。

行きたい場所があるのは、その先に大切な人がいるからです。自転車に乗って遠くまで行きたいと思うのは、周囲にそれをしている人がいたからです。「学習」には、社会的な繋がりであるコミュニティが必要なのです。

そして、私たちが学習するときに必ずついてくるものが失敗です。歩きたいと思って立ち上がり、よろめいて尻餅をつく。そんな行動を繰り返して、人は歩けるようになります。

私たちは学習するときに必ず失敗するのです。なぜなら学習とは、今ここに自分のできることがあり、できないところに足を踏み出す行為だからです。学習のプロセスというのは、失敗のプロセスなのです。

境界線を越えて足を踏み出す人は、リーダーである

このような学習の捉え方を提唱したピーター・センゲ氏は、「学習者は皆、リーダーだ」と言います。一体、なぜでしょうか?

リーダーと聞いたときに、まず私たちが思い浮かべるのは、「権力・権威(authority)を持った人」や「上司(Boss)」などの役職ではないでしょうか。また、「ビジョンがあって情熱があり、リスクを取る勇気のある人」というリーダーとしての性質をイメージすることもあります。

つまり、私たちは場面によってリーダーが指す言葉の意味を「役職」と「性質」で使い分けているのです。

もし、リーダーの「性質」を持つのはリーダーの「役職」についている人のみだと考えるとどうなるでしょうか。役職についていない人は、「ビジョンや情熱を持たず、リスクを取らない人」となります。

何らかの課題に直面したとき、「これは上司であるリーダーが責任を持って決断するべきだ」という思考に陥ってしまうのです。しかし、組織の中で私たちが直面する課題のほとんどは、上司が部下に指示を与えるだけで解決できるものではありません。

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ここで、リード(Lead)の語源に注目してみましょう。リードの語源は、「境界線を越えて足を踏み出すこと(to step across the threshold)」という意味を持っています。もう一つの意味は、「死ぬこと」です。私たちは勇気を持って知らない世界に足を踏み出すとき、これまでの自分を殺すのです。

人は歩けない状態から歩こうとして立ち上がり、バランスを崩して転びながらも何度も立ち上がる。そして歩く力を身につけていきます。これはまさに、境界線を越えて足を踏み出すことです。

このような行動に注目したとき、役職についている人のみがリーダーではないことがわかります。今の自分にできることがあり、そこから一歩を踏み出そうとする学習者は、まさにリーダーだと言えるのです。

「学習」とは、一線を越えていくプロセス

「学習」とは、自分にとって大切なことができるようになっていくプロセスのことを言います。それは失敗のプロセスであり、一線を越えていくプロセスでもあるのです。

私たちは他者との関わりの中でビジョンを持ち、それを実現するために個人や集団として境界線を越えていく力があります。自分を高め、互いに高め合っていける場が『学習する組織』なのです。


本記事の内容は、『学習する組織』P196または526を参照いただくと出てくると思いますが、「学習とは、私たちにとって意義のあることができる力を高めていくプロセス」である、といった定義です。



最後までお読みいただきありがとうございます。この記事は、システム思考教育家である福谷彰鴻の講義を基にして作成したものです。


3/26現在、「システム・リーダーズ実践コミュニティ」の説明会を開催中。『学習する組織』を実践的に学びたい方は、ぜひご参加ください。


『学習する組織』の解説note についての説明は、こちらをご覧ください。

(文:建石尚子 監修:福谷彰鴻)

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