隼ちゃん

みんなは、オカマだと馬鹿にしていたけれど、実は、そうじゃないって私だけが知っていた幼馴染の男の子がいた。

この前、久しぶりに実家に帰ることがあったときの道中、見覚えのある癖の強い歩き方をしている女の人がいて、あれは隼ちゃんのおばあちゃんだと直ぐに気づいた。

近所だし、久しぶりに寄ることもできたけれど、やめた。

中学を卒業してからほとんど一度も会ってなくて、その男の子は高校を卒業後、地元の工場で働いていると噂で耳にした程度。そのまま道を踏み外さず生きていればいいな。

思えばあれから10年以上経っていて、人なんて10年あれば変わってしまうことを切なく思った。

当時、私は隼ちゃんがいれば、それだけで楽しくて、地区に分かれて登下校する決まりなんて気にせず毎朝、私は隼ちゃんの家で少し遊んで一緒に学校に行っていた。道に独特な名前を付けたりして毎日違う道で。恋とかそんなんじゃなくて、性別を超えた、最初で最後の友達なんだったと思う。感受性が似ていたのかもしれない。

それが、中学生になって少しずつ話すことが少なくなっていって、今は何も知らない。元気なのかも分からない。ふと、その幼馴染の男の子のおばあちゃんを見かけたときに、彼の大事な小学校生活を私との時間だけにしてしまったことに申し訳なさを感じてしまった。中学校になって私は違う女子グループに属して彼とは疎遠になってしまった。私は新しい居場所を見つけることができたけれど、彼にはそんな居場所がなかったんだと思う。

難しいな。人生。

私の唯一の異性の友達であり、一番大好きだった幼馴染がこの世界のどこかで、しっかりと幸せに生きていることをただ願うことしかできない私の人生やいかに・・・?って感じだけれど、そんなもんだよなって思える日がちゃんと来ますように。

END.


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