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手放すことを決めた日

こんなつらいなら、成長なんてしなくていい、と泣いた

(けど、したいのは知っているんだ)

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左手にずっと石を握っていた。

手渡された時、その石はあたたかかった。私はあたためられてた。

その石が気に入っていた。

だから、大切にしたくって

かたくかたく、強く握りしめていた。

握りしめていたら、その石ではなく”握っていること”が目的になっていた。

気づけば、その石はもうあたたかくなかった。

時々、指の隙間からのぞいては、石があるか見てみた。

昔より少し黒ずんでいて、実はすこし、醜かった。


でも、手放したら・・・

手が空っぽになる、それが怖かった。

怖かったんだ。。

(ずっとずっと握っていたんだから、今まで大切にしてきたんだから・・・)

自分に言い聞かせていた。


まだ手放せなくって、かたく握って歩いていたら

花を見つけた

きれいで、きれいで

その花がほしくなった

でに握った手を開いて、石を手放さないと、その花はつかめない

その花をつかむまでに

手の中が空っぽになる、何もなくなる

こわくてこわくて

何も持たない私が、こわくてこわくて

(こんなつらいなら、成長なんてしなくていい)

空っぽになった怖さを想像しては怯えて、泣いて

ほしい、ほしくない、ほしい、いらない

ほしい、ほしい、ほしい、ほしい

指の力がゆるんできた

隙間から黒い石がのぞく

この石が落ちた時、どんな音を立てるんだろう。

あの花はどんな手触りだろう。


手放さないと、ほしいものをつかめない

もうわかってるんだ

”手”は、

何かを手放さないためにあるのではなく

触りたいものに触るためにあるんだ

”手”は、

人にとられないために、かたくかたく握りしめるためにあるのではなく

愛する人をさするためにあるんだ

”手”は

・・・・・

なにももたない空っぽの手で、

これから何に触れて、誰とつなぐんだろう

感じる

感じる

喜び、恐怖、感謝、苦悩

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もう大丈夫

私が、その空っぽな手を見ていてあげる

怖さに震え、手放した後悔に打ちひしがれる君を見ていてあげる


だから、決めていいよ。


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