職業としての小説家(村上春樹)
村上春樹さんの小説を昔は好んで読んでいたのだけれど、今はほとんど読まなくなった。というか小説自体を読む量が以前に比べてかなり減った。理由はあまり思い当たらないけど、たぶんそのころからノンフィクション作品とか、現実の世界の方に関心を持ち始めたのが大きかったんだろうと思う。
ただよく読んでいたころは村上春樹さんが出していた長編作品は最新作を除いて大体読んでいたと思う。けれども、今ではほとんど内容は覚えていないし、じゃあそのころ読んで理解していたのかと聞かれると、ほとんど理解していなかった。「読んで理解できる」という面白味より、「その作品そのものの雰囲気を楽しむ」というのが一番近い感じだ。
そういう、大した理解もできてない中で、読んでいて理解できたような感じが初めて感じられたのが、この作品「職業としての小説家」である。これも以前読んだ本の例にもれず、ほとんど覚えていなかったのでわりと楽しく読めた。
個人的に面白かった点は、村上春樹さん長編小説の書き方が非常にシステマティックな点。「長編小説を書く場合、一日に四百字詰原稿用紙にして、十枚目当で原稿を書いていくことをルールとしています。(中略)もっと書きたくても十枚ぐらいでやめておくし、今日は今ひとつ乗らないなと思っても、なんとかがんばって十枚は書きます。なぜなら長い仕事をするときには、規則性が大切な意味を持ってくるからです。(中略)僕らは自分のやりたいやり方で小説を書けばいいのです。」(本文154p)
ここの部分が非常に面白かった。意識的な制約を設けることで、逆に自分が自由に書ける。逆に自由に書くということを過剰に意識しすぎて、書き方が不自由になる。小説家を目指している人とか意外と参考になるんじゃないでしょうか(自分は書かないけど)。
もう一つ面白かった点は、村上春樹さんのなかで、精神と肉体のつながりがかなり強調されているところである。「第七章どこまでも個人的でフィジカルな営み」ほぼ一個を使っていかに、小説(特に長編)を書く際に、肉体面が大事がを述べている。
「心はできるだけ強靭でなくてはならないし、長い期間にわたってその心の強靭さを維持するためには、その容れ物である体力を増強し、管理維持することが不可欠になります。」(194p)
これだけではないけれど、村上春樹さんにとって肉体と精神のバランスの重要さを教えてくれる部分だと思う。
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