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本の読み聞かせは寄り添うこと
児童文学が子供に必要な理由
自分で読むことと読みきかせること
令和6年2月11日付毎日新聞に興味深い記事を見つけました。
子供に大人気で、アニメ化された「ガンバの大冒険」シリーズの著者、斎藤惇夫さん(83)は現在、さいたま市浦和区で幼稚園長を務めながら、絵本について語る「絵本大学」の講師として21年にわたり、子供にとっての絵本の大切さを説いてこられました。
「自分の心の中にどれだけ広い宇宙を持っているか、子供たちは素敵な物語と出会って自覚していく。優れた児童文学が、子供には必要です」
斎藤さんは、10歳までの子供には『読み聞かせ』というものがとても重要だとおっしゃられています。
10歳以降になると、自分で自発的に読めるようになり、それ以降は側に親がいなくともよくなるのですが、10歳までは親が『読み聞かせる』必要があるというのです。
子供は物語の主人公に自己同一化できる能力を持っています。
本の中で起こった出来事というものが、そのまま『体験』として心に刻まれます。
「子供のうちから本を読むようにした方が良い」と聞いたことがあるはずです。理由としてはそうした『体験』によって『感受性』が養われるからなのです。
私が子供の頃、まさに斎藤惇夫さんが描かれた「ガンバの大冒険」シリーズのアニメ化されたものをテレビで視聴しましたが、今でも『恐ろしい体験』として心に刻まれたままです。この体験によって、私の中では「イタチは怖い生き物だ」というイメージを植え付けられています。
10歳までにこうした体験をするとき、親がそばに居てくれたら過剰に恐れることなく、安心してその体験というものを味わうことができると斎藤惇夫さんはおっしゃられているわけです。
確かに体験というのは、好奇心よりも恐怖心が勝ってしまうことが多く、それによって『体験』ではなく『トラウマ』になってしまうことがあります。
そうなってしまっては、せっかく体験を愉しむために読もうと思っていても、「この児童書は恐ろしい描写はないか」と確かめてから読まなくてはいけません。
トラウマを避けるため「内容によっては楽しめない」ということでは、『体験』を心から愉しむことができず、『体験できる内容』も極限られた一部のみとなってしまうと想像できます。
安心して、子供が多くの児童書に触れ、多くの体験をするためには、親の『読み聞かせ』というものが重要だと理解できます。
YouTube動画と本の違い
私も昔から本を読むことが好きな子供でした。
幼稚園児だった頃も、幼稚園の中に置いてあった絵本をよく読んでいましたし、小学校に入ってからも、真っ先に図書室の場所を覚え、休み時間になると図書室で本を読んでいたのです。
中でも「江戸川乱歩」という作家が好きで、よく読んでいまいた。
「江戸川乱歩」の作品はどれも恐ろしかったのですが、中でも『人間椅子』という作品が心に残っています。
この作品は椅子職人が椅子に恋をする話で、好きな椅子とずっと一緒にいたいと思い悩んだ挙句、椅子の中に自ら入ってしまうというお話です。
そのうちに、座ってくれる女性に恋をするようになり、それが深い愛へと変わっていく……
というお話でしたが、この作品には想像力をかきたてられた記憶が鮮明に残っています。
何しろ、醜い椅子職人も、椅子自体も、恋も愛もわからないうちに読んだのです。何もかもが想像の世界で、しかし何処となく恐ろしい。
こうした「恐ろしい」と感じた感受性を刺激された部分というものが色濃く残っていくことが、こうした読書体験の醍醐味ではないかと思うのです。
「体験として味わうのであれば、動画などでも同じ効果があるのではないか」と言われる方がおられます。実際に私も、先ほど「ガンバの冒険」をテレビで視聴した経験を語らせていただきました。
しかし、この意見にも斎藤惇夫さんは持論を展開しておられ、「活字と挿絵だと、想像力を駆使しないと物語の中に入っていけない。懸命に自分の頭を働かせるんです」とおっしゃられています。
私たちは現在、多くの『コンテンツ』と呼ばれるものに触れて生活しています。これらは、そのほとんどが無料で楽しむことができ、なおかつ便利であるためついついそのコンテンツに溺れてしまいます。
わざわざ『本を読む』といった面倒な方法を取らずとも、もっとコスパの良い手段によって、作品の中身を自分の中に取り込んでいくことが可能です。
しかし、こうした現状に斎藤惇夫さんは警鐘を鳴らされています。
与えられた動く映像からでは決して得ることのできない、『頭を働かせる』ことによって得られる『物語を自らの頭で創り、感じること』の重要性を説いているのです。
親による『読み聞かせ』がその土台を作るというわけです。
親の声で優しく語られる物語は、子供にとって何よりも代え難い愛情を感じると共に、感受性を育み、自らで考えることができる思考をつくっていくのです。
『読み聞かせ』は子供に寄り添うことなのです。
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