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『赤の世界』~序章「ここは赤の世界」~
ここは赤の世界。
この世界に住む人は皆、赤色の服をまとい髪も赤く染めている。
赤い靴に赤い鞄、ありとあらゆるものを赤に染めているのだ。
なぜ赤か、そんなことに理由はない。昔からそうでみんなそうしている。
赤く染まっている世界に全く違和感を持っていないのだ。
この世界では夕日に照らされ赤く染まった景色を「空」と呼ぶ。青く透き通った景色は「空」とは呼ばず、無いものとして扱われる。
こうして人の手によって赤一色にしか認識できなくなった世界はなんの新しさもなく、退屈に溢れていた。
そんな世界に疑問を持った男がいた。
「赤でも青でも緑でも、空は空だろう。一色しか無いのはおかしい!」
彼はそう言って懸命に訴えた。
だが、その主張に賛同する者は一人としていなかった。
そして世界は彼の発言を、彼自身を無いものとして扱ったのだ。
なぜ、たくさんの色が存在するのに私たちはそれを認めず、一色に染めてしまうのか。
みんなと一緒でないといけないのか。自分の好きな色を求めてはいけないのか。
誰もが自由を求めているはずなのに、何かがその気持ちを押さえつけている。
訳のわからない色に対する不安か。
グループから外れてしまう恐怖か。
自分自身を表に出す勇気がないのか。
目立つものが叩かれ排除されてしまう世の中なら自由など到底来ないだろう。
私たちは矛盾の世界に生きている。
自分が一番求めているはずのものを自分自身で遠ざけてしまっている。
人の自由を認められない人が自由になどなれないのだ。
これがこの世界の仕組みであり、真理である。
ここは真っ赤に染まる 赤の世界。