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【植物と短歌】ハナミズキ
ハナミズキと言えば春というイメージがあるけど、それは花の時期が春だからだろう。実をつけるのは秋だ。
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赤色は結構目立つのに、実は花ほど注目されていない、というかまったくされていない気がする。私自身、最近植物と短歌についての投稿を始めたから植物に注目するようになっただけで、以前は気に留めたことがなかったし。
まあ、名前からして『「花」水木』だしなあ…。
まずはハナミズキの基本情報を見てみよう。別名アメリカヤマボウシ。
高さ5~10mになる落葉樹. 北米原産. アメリカ合衆国の代表的花木の一つ. 葉の展開に先だって樹冠が花でおおわれるため, 日本のヤマボウシよりも華やかである.
(中略)
1912年, 尾崎行雄東京市長がアメリカにサクラを寄贈したとき, その返礼に送られた.
総苞が白色の品種のほかに, いろいろな程度に紅色の諸系統や, 果実が黄色い品種が知られ, また美しい黄や白色の斑入り品種もある.
100年と少し前にアメリカからやってきた植物だ。
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ただ一般的に花だと思われているものは総苞と呼ばれる葉で、花はその真ん中にある黄緑色の部分。
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ハナミズキの花(総苞)に注目されがちな傾向は短歌にも表れている。
花水木ここにかしこに花かかぐ この町筋の直線的なる
花水木今日ひらひらと咲きゐたり憂ひを遠く送るごとくに
花水木はなびら展べて咲く街に風漂へりたのめなきまで
私が探した範囲ではハナミズキの登場する歌は花を詠んだものばかりで、実を詠んだものは一首も見つけることができなかった。
そもそも歌の中で器官が明言されていなくても、ハナミズキと聞いて読み手が思い浮かべるのは花の場合が多いと思う。
花水木の道があれより長くても短くても愛を告げられなかった
反対に同じくらいの時期に同じ赤い実を付けるナンテンは、花を詠んだものがあまりなくて実ばかりなのに…。
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この理由は、実を付ける時期にナンテンの葉は緑なのに対し、ハナミズキの葉は赤く色づいていることが関係しているのでは、と考えた。
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…と思ったけど、葉が赤く色づいたナンテンも見つけてしまった。
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その他の要因として、樹高、実がなる高さもありそうだ。ナンテンは樹高が高くないので意識しなくても視界に実が入るけど、ハナミズキは樹高が高いから実は見上げないと視界に入ってこない。
他にもこの時期に赤い実をつける植物にクロガネモチがある。
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こちらも圧倒的実優位な植物なように思う(少なくとも私の中ではそう)。まだ短歌を探せていないから、今後調べていつかクロガネモチについての文章も書きたい。
最後に。
短歌からは脱線するが、ハナミズキと言えば思い浮かべる有名な歌があるだろう。
一青窈の「ハナミズキ」。
この歌でハナミズキはどの器官が歌われているのか気になり歌詞を見たところ、「つぼみ」「薄紅色(花)」「実」「葉」いろいろ出てきた。
器官が多く登場することで、歌の中で季節の移ろいや時の流れを感じることができる効果があるなと思った。
ハナミズキは解釈の難しい歌だと思うが、この時の流れを感じさせる効果が一層歌に深みを増している気がする。