猛獣がでる宿
私はルワンダ滞在中に結構なボロ宿で生活をしていた。詳しくはこの下のリンク
https://note.com/syogokarafukegao/n/n522c80851970
「一泊500円のボロ宿生活」という記事を読んでいただけるとありがたい。
とにかくその宿はないものが多かった。
WiFiなし、お湯シャワーなし、現代的なキッチンなし、洗濯機なし、もちろん食事の提供なし
ないものが多い反面あるものはしっかりあった。
断水あり、停電あり、蚊・ハエ・ゴキブリあり、穴のあいた蚊帳あり
まぁこんな宿で生活をしていたわけだが、この宿での一番の問題はこんなものではなかった。
ある晩ベッドに入り寝れずにいる自分の耳に猛獣が唸る声が入ってくる。
(ここはアフリカだ、ライオンやチーターがいてもおかしくない)
(しかし、小国ながら一国の首都だぞ。そんな獣がいられては安心して生活できない)
(俺の寝込みを襲うつもりなのか)
その声の主は10分間近く絶え間なく唸り続けたと思ったら、一瞬にして消える。そして、数分後にまた現れ10分間近く唸り続ける。
そんな調子を数回繰り返す。
一度だけではない。週末を中心に現れるその見えない存在が何なのか最初はわからなかった。しかし、幾度か経験した後に確信した。
当時二十歳の私は、非モテに分類される童貞男子であったのは事実だが、年頃の男性であることも事実であった。
世の多くの20代男性が持ち合わせる欲求は、例に漏れず自分にも備わっている。
奇麗な女性を見て、変な気を起こすこともあるし、いかがわしいサイトをハシゴすることもある。
それはごく自然なことで、何一つとして恥ずかしいことではないと思っている。体の内側から湧き出てくる本能的な部分が自分を突き動かしていると半分諦める気持ちもある。
その夜もあまり寝つきが良くなく薄暗い部屋でダラダラしていた。寝れたらいいな程度でベッドに横たわり、目を閉じたり開いたりを繰り返してた。そんな最中、また猛獣の唸り声がホテル内に響き渡ってきた。いつものようにまた始まったのだ。
しかし、今回はいつもと違うと感じた。いや恐らく彼らは変わりないが、その獣の咆哮を受け止める自分自身がいつもと違う。
何か内側から沸き立つ欲求が理性という閉じた蓋を刺激して、それをこじ開けようとしている。
(何を変な気を起こしそうになっているのだ俺は)
実際には、何も見えていないし、どこを触られているわけでもない。見えているのは薄暗い部屋に吊るされた蚊帳だけだ。しかし、身体が熱を帯びてきている。
鳴り響く大きな喘ぎ声と肌と肌がぶつかり合う音。
何も知らずに安いという理由だけで選んだ宿はそのような目的の人間が集うところだったのかもしれない。これは週に2、3回のペースで起こるこの宿ならではの現象なのだと理解するようにした。しかし、後悔と興奮が同時に押し寄せる。
黒人の底知れぬ体力には尊敬せざるを得ない。一度の行為で5回戦ほど交えていると想像される。
心から敬意を払うと同時に自分がそのレベルにないことが不甲斐なく感じた。