アン・ハサウェイは目をこする

調べてみると、サラテクトのリッチリッチという商品が日本で買える最も強い虫よけスプレーのようだ。それを携えてアフリカに向かおう。

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ご存じのように、アフリカではマラリアや黄熱などの蚊によって媒介される病気がいくつかある。黄熱に関しては、行くにあたり予防接種を受けないと入国できないので強制的に受けさせられる。

蚊に刺されないというのがすごく重要なことなので、強い虫よけスプレーを買って持っていく。

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最初の1ヶ月間の日本人ゲストハウスでの生活で思った以上に日本人と出会うことが出来た。その中で、大多数は大してマラリア対策をしていないことが分かった。渡航前はセンシティブになっていたが、生活するにあたり毎日虫よけスプレーを使うわけにはいかないし、キガリに住んでいる限り病院はあるのでマラリアを発症しても死なないということも確認できた。

そのため虫よけスプレーを使わなくなってしまった。

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ルワンダに来て4ヶ月ほどたっただろうか。毎日のインターンシップの生活も慣れてマンネリ化している。宿に戻ってもやることがないので日本人の知り合いにもらった本を日が暮れるまで宿の敷地内で読んでいた。部屋の中がとにかく薄暗いので、太陽が出ている時間は屋外にいることが多かった。

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そのため蚊に刺されることもしょっちゅうある。もう全身のどこかの箇所が痒いという状況にも慣れて、いくら刺されても変わらないのではないかという心境になってくる。もうマラリアなど正直眼中にないといっても過言ではなかった。一日に何十ヶ所というレベルで刺されるときもあるからだ。

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部屋の中にいたから刺されないというわけではないが、蚊帳の内側にいない限り蚊とのやり取りは繰り返される。

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私の長いすね毛に空しく絡まって出てこれなくなった蚊も見たことあるし、音だけで蚊を片手で掴み殺したこともあった。

それほどまでに蚊と戦っていると、ハエという存在がいかにかわいいものかと思ってくる。

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私が、外のベンチで本を読んでいると、アンは私の隣に来て、肩に乗る。彼女は忙しなく動きながら、しかし一度止まると自分の体のメンテナンスでもするように顔をこすり、手をこすり、羽をこすってまた飛んでいく。しかし、俺のことが好きなのだ。また戻ってきて今度は私の膝に乗る。少し毛が邪魔しているが、そんなことは彼女には関係のないことだ。また全身をこすっている。彼女を見つめていると、なぜか勇気をもらえることがある。小さな体で一人どことなく生活をしているのだから。多くの人間に煙たがられて幾度となく移動を余儀なくされたのだろう。そして、私のもとへたどり着いたのだ。しかし、心配することはない。私はいつもあなたと一緒にいる。いつでも私で休み、文字通り羽を伸ばしてほしいと思っている。

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ハエに集られて、一匹のハエの観察をするのも日記になりつつある。その日つけたアンという名前は、私が大好きな女優アン・ハサウェイからきている。

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