アウェー会場でW杯
私はルワンダで語学学校に通っているわけだが、そこではよくディスカッションをする。
しかし、まぁ変わった学校だと常々思う。正確にいうと、ほかの学校を知らないので変わっているかそうでないか判断はできないが、一人の日本人として参加していると戸惑うことも多々ある。
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毎週金曜はディスカッションの日ということで90分間与えられたトピックについて議論をする。10人以上集まって一斉に議論する場合と、数人のグループを作りディベートするときもある。
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私が参加したディスカッションでとりわけ印象に残っているのは、
「植民地支配についてどのように考えているか」や
「独裁政権に賛成か反対か」
といったトピックだ。このような政治的で歴史的なトピックになるとバックグラウンドが全く違う人間の意見を聞くのが面白い。
まず、僕が受けたクラス内では圧倒的に独裁政権を支持する主張が多かった。これにはかなり驚いた。当然のように反対意見を述べようとする私にはアウェー感がある。
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「現状として、リビアではカダフィ大佐の独裁が終わり、国内が混乱状態にある」という主張。
「カダフィ政権のときの方が国自体が安定していて、経済力もあった」
もちろん証拠を提示して議論するというようなものではなく、あくまで英語のスピーキング練習の一環である。
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日本でニュースを見ていると、いかにもカダフィ大佐は悪者で、リビア国民は自由を勝ち取ったという感じで報道されている。
「あっぱれリビア国民、ざまあみろカダフィ!!」というような風潮もある。私自身も特に違和感なく、そのように考えていた。
無論、自由を勝ち取ったわけだが何もかもうまくいっているというような情勢ではない。
確かに彼らの言うように、カダフィ政権崩壊後のリビアの状況はひどいものがある。その状態が民主的かと問われると答えることが難しい。
「しかし、だからといって独裁政権がより良いものだとは思えない」と反論したことを覚えている。
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あとになってわかったことだが、ルワンダという国自体もほぼ独裁状態にあるということだ。何度でも大統領選挙に立候補できる法律に変わったらしいのだ。そのおかげでカガメ大統領が10年以上独裁状態にある。しかし、カガメはジェノサイドを終わらせた英雄的な存在だし、多くの国民が彼を慕っているというのも事実だと思うので、あまり反発は起きない。というか軍や警察が大きな力を握っている国でもあるので現段階で反乱を起こせる勢力などいないだろう。
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植民地主義に関することも衝撃的だった。
ルワンダは初めにドイツ、あとにベルギーに植民地支配されているわけだが、私は勝手にルワンダ人皆が
「ベルギー人クソくらえ!!」
くらいに思っていると考えていた。
しかし、その場にいた参加者の過半数が植民地支配のメリットを多く語り、植民地支配のおかげで国のインフラは整ったと発言していた。
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インターンシップがスタートすると田舎に行き道路直しを行っていた。その夜は、ちょうどワールドカップのベルギー日本戦が行われる日でルワンダの田舎の会議場みたいなところで、大スクリーンで現地の人と観戦した。多くのアフリカ人男性はサッカーが大好きだからだ。
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乾が2点目を決めたとき、会場内が大きな歓声に包まれた。と私は思っていた。
しかし、ベルギーが1点、2点と反撃してくる。それらのゴールが決まるたびにこれまでにないくらいの歓声が生まれる。
(あれ?みんなどっち応援しているんだろう?)
そして試合終了直前、決勝点となる3点目が入る。そして試合終了。
皆立ち上がりハイタッチを繰り返している。
(何ということだ、気づかなかったがここはアウェーなのか)
(なんてこった、植民地時代からのにっくきベルギーを倒そうとしている我が日本を応援しているものだと思っていた)
屈辱的な負け方をしたあげく、この悔しさを理解してくれる相手もいなかった。唯一、一緒に日本を応援してくれていた同じ団体の現地スタッフであるエイドリアンと二人無言で会場をあとにした。
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このことからもわかるように植民地支配に対しては肯定的な意見が多いのかもしれない。正直、ワールドカップ観戦だけでルワンダ国民の民意を把握するのは無理があるが、参考程度に紹介しておいた。
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しかし、毎回政治的な問題や歴史背景に関することをテーマにしていたわけではなく、
「ルワンダはこれからどのように発展すべきか」や
「もし自分の子どもに10万円あげるとしたらそれでビジネスを始めるべきか、それとも学校に行かせるべきか」というものもあった。
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