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【012】「どうか思い出の中でじっとしてくれるな」2023年2月の日記➀

マーダーミステリーというものを初めてプレイした。
そもそもマーダーミステリーってなんぞや?という方については、以下のリンクが分かりやすく説明してくれてます。

マーダーミステリーゲームとは、あなたが「物語の登場人物」として、物語の中で起こった事件の犯人を捜しながら、個々のプレイヤーに設定された秘密のミッションの達成を目指す、会話を中心とした推理ゲームです。

https://www.lostproduct.jp/beginner/

TRPGの一種であり、参加者はミステリー小説の登場人物に扮して、役割を演じながら文字通りロールプレイング的に事件の真相を追っていく。前提となる物語はパッケージとして用意されており、参加者は一人一役のキャラクターを与えられる。キャラクターにはハングアウトとして機密設定が開示される。中には犯人役もいるわけで、犯人役を引き当てた人物は自分が疑われないように会話を運んでいく必要がある。このあたりのシステムは「人狼」に似ているだろう。

マーダーミステリーにおいて、参加者には大きく二つの目標が課せられる。
・一つは物語における事件の「犯人」を当てること。
・二つはキャラクター自身の私欲を満たすこと。
(たとえば、XXを犯人にさせないようにする、とか)

上記の目標を達成できるか否かによってポイントが付与され、最終的な順位が決められる。しかしマーダーミステリーの楽しさはロールプレイングそのものにあるので、ポイントの優劣はあまり気にならない(と思う)。

何より面白いのは、これが「一度切り」の不可逆性を孕んだ遊戯であることだ。ミステリーを題材にしている以上、真相を知った後は同じ物語を遊べない、という制約が存在するのだ。

これって凄くないですか。複数人で遊ぶパーティゲームなのに、一度しか遊べない。普通のTRPGなら進行の流れ自体を楽しむ側面が存在するので、複数回遊ぶこともできるけど、マーダーミステリーにはそれが許されない。ネタバレされた時点でその物語を遊ぶ権利は剥奪される。

このあたりの不可逆性は「リアル脱出ゲーム」にも似ているだろう。ネタを知った状態で遊んでも本当の楽しさは得られない。大ネタを知る機会は一度きりしか与えられない。一度遊んでしまえば、その記憶はその瞬間にしか存在できないのだ。


閑話休題。ここからはニンテンドーオンラインの話をする。

ニンテンドースイッチでは過去のハードのゲーム、たとえば「ファミコン」や「スーパーファミコン」、「ゲームボーイ」などのタイトルを遊ぶことのできるサービスが用意されている。友人に教えてもらってリリースタイトルを見ていたら、そこに「ワリオランド3 不思議なオルゴール」が存在していることに気づいた。

「ワリオランド3 不思議なオルゴール」は僕が初めて買ってもらったゲームソフトだった。自分から望んだわけではなかった。親がある日突然ゲームボーイカラーとこのソフトを与えてくれたのだ。いや、もしかすると誕生日祝だったかもしれない。でも、小学生の子どもが「ワリオランド」をねだるとは思えない。そこには親からの不確定な想いが存在した。

結果的に「ワリオランド3 不思議なオルゴール」は僕が初めてエンディングに辿り着いたゲームとなった。これはネタバレだけど(23年前のゲームのネタバレを気にしても仕方がない)、物語のラスボスはワリオを導く「ナレーション役」にあたる存在だった。このダイナミクスは小学生の僕にとって衝撃的だった。あらゆる困難を乗り越え、始まりの地に戻ってくると、そこが最終決戦の地に変貌した。

でも、この物語は思い出の深いところに沈んでしまっていた。今日この時まで思い出すことはなかったのだ。


さらに閑話休題。ここからはさらに古いゲーム話をする。
2020年頃にFlashのサポートが終了して一律にプレイ不可能になってしまったけど、かつてFlashゲームと呼ばれるジャンルが存在した。といっても僕はそこまで入れ込んでいたわけではなくて、そもそも自宅にインターネットに接続されたパソコンが登場するのが小学生高学年~中学初等の頃合いだったので、全盛期は逃している。

その頃の僕にとってゲームといえば友人の家でプレイする「スマブラ」や「カービィのエアライド」だった。それでも「リアルアンパンマン」や「やわらか戦車」などムービーは流行っていたし、富士通がリリースしていたゲームパックの「エアホッケー」や「ブロック崩し」、サンリオがプロデュースした「バットばつ丸のチャリでゴー」にのめり込んだ記憶はある。

それらの全てはFlashの衰退とともに記憶から薄れていき、サポート終了を機に触れることすらできなくなった。

インターネットって物理的な媒体を逃れて「データ」として人類の叡智がいつまでも保存されていくイメージがあるけど、実はそんなことはない。ハードディスクの寿命はせいぜい5年間程度だし、先のFlashを代表とする規格についても10~20年度でサポートの寿命を迎える。実のところ「紙の本」の方がずっと持続性が高い。

ニンテンドーオンラインの過去ハードのリバイバルについても、無数に存在するタイトルの中から珠玉の複数本が選定されているにすぎない。僕の思い出の「ワリオランド3 不思議なオルゴール」はめでたく再販されたけど、きっと同じように「初めて」だったゲームがすでにプレイ不可能になっている人たちもたくさんいるだろう。



「スマブラ」や「カービィのエアライド」も、「リアルアンパンマン」や「やわらか戦車」も、「エアホッケー」や「ブロック崩し」も「バットばつ丸のチャリでゴー」も、「ワリオランド3 不思議なオルゴール」も、まさに今この瞬間忘れてしまっている全ても、少し時間が経てばすぐに忘れてしまう。

マーダーミステリーは一度きりしかプレイできない不可逆性を備えている。
本当に凄いよな。プレイしている時が最大瞬間風速。そこから後は忘れていくしかない。

思い出の中でじっとしてくれるな、と思う。
何度でも蘇ってほしい。そうでないと忘れてしまうから。


Windows10、いつかお前のことも忘れてしまうんだろう。

まったく、戯言だよな。

(おわり)

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