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3度目のソーセージを作るおっちゃんに泣いた話 【アドベントエッセイ(359/365)】
早いものでクリスマスまであと6日を切った。
どこよりも早いアドベントカレンダー、359日目は「ソーセージを作るおっちゃん」の話。
ネトフリで配信されている「アメリカンバーベキュー最強決戦」という番組にハマっていて、夜ご飯を食べる時とかに流している。
この番組は各地から集まったバーベキューマスターがその腕を競う番組だ。
参加者は毎回出されるお題に合わせて、制限時間内に審査員を唸らせる料理を作らなければならず、最下位になった人から脱落していくシステム。
その中で、割と頻繁に最下位争いの場に立たされるおっちゃんがいる。
おっちゃんは猟師とかやってるらしく、腕には思いっきりタトゥーが入っているイカついビジュアルだが、笑顔がチャーミングな好々爺。
今日見た回はジビエ料理の出題で、ビーバーとかアリゲーターとかアナコンダといった珍しい食材を調理しなければならない回だった。
件のおっちゃんは前回も最下位争いをやった後。だが、おっちゃんは山での調理に慣れているから、ジビエは得意だと喜んでいる。
「この回で名誉挽回してメンバーに残るぜ」的な言葉とともに、意気揚々と料理を始めた。
そのあと、おっちゃんは驚くべき行動をとる。ソーセージを作り始めたのだ。
おっちゃんはこれまでこの番組で2回ソーセージを作ってきたが、そのどれもが審査員から残念な判定を受けていた。
最下位争い続きで、「もう後がない」という状況にも関わらず、おっちゃんはソーセージを選んだのだ。しかも珍しいバイソンの肉を使って。
「これまで2回は失敗した。でも学んだ。今回負ければ脱落、勝てばホームランだ!」
おっちゃんはカラカラ笑いながら肉を腸詰めにしていく。
私は、このおっちゃんを心の底から尊敬した。
人生でそう何度も来ないであろう一大コンテンツへの出場のチャンス。番組内で試行錯誤できる機会も限られている中で、普通ひとつ何かに失敗したら、同じものでリベンジしようという気持ちにはならないだろう。
それなのにおっちゃんは、2度ならず3度目、しかも崖っぷち状態でソーセージを選択したのだ。強い、強すぎる。信じ難い不屈のハートだ。
おっちゃんの選択を知った審査員は案の定不安を示し、タイムアップ後の試食では予想通りの酷評だった。
そして、おっちゃんは順当に最下位になり、ついに番組を去ることになった。だか、ドラマチックな逆転劇が起きないところも、なんかいい。
最後、おっちゃんがいつもの笑顔で、でも目を真っ赤にして仲間との別れを惜しみながら最後のコメントをするシーンでは、思わずこちらも泣きそうになった。
ソーセージを作るおっちゃんの勇姿は、遠く離れた異国の、しがない男の脳細胞に、しかと刻まれた。
最近で1番感動した。