#0-はじめに-
私はひとりで食事をすることを好ましいと思う。お店に入り、人の目を気にせず食べたいと思うものを注文して、味や匂い見た目などをじっくり楽しむことができるからだ。
ひとりでの食事と同じくらい気の知れた人と食事に行くのも好きだ。表情や会話から食べたものに対してどう感じたのか想像することが楽しい。提供された食べ物は写真として記録することができるけれど、食の体験は食べものを口に運んでいる途中、直後その瞬間でしか感じることができない。そういった、固有の体験を愛おしいと思っている。自分が感じた体験や他人が感じた体験を交換しあうかたちでより食の体験を見つめ直したい、そんなふうに思っていた。
ただ、私は対面で人とコミュニケーションをとって感想を語り合うことに慣れていない。話をした後「ああ、あの人が言おうとしていたことはこういうことだったのか」「それなら自分はこう考える」というように、少し考えを整理して話す言葉を考えてようやく会話できるのだ。文章ならひとりで行う食事と同じようにじっくりと考えを整理して言葉で表現することができる。
アヤモ氏とはオンラインでの勉強会を中心としたコミュニティで知り合った。画面越しで会うことが多く、会った時に話をする程度でどんな生活を送っているかもわからなかった。何度かオンラインイベントで会った後、Instagramにひたすらこってり系ラーメンや立ち食いそばといった食べたものを投稿していることを知った。そこには食べものと孤食をとても愛している姿が溢れていた。
ある時は、アヤモ氏がnoteで公開している好きでたまらない立ち食いそば屋のそばについて書いている文章を読ませてもらった。記事には、食べるまでの過程、お店の近くに溢れている匂い、匂いを受け取った時の思い、食の体験について綴られていた。アヤモ氏なりの素直な言葉で食への思いを知ったのだ。
どちらから声をかけたかわからない。以前からアヤモ氏も往復書簡を交わすことに興味があったらしい、もしかすると私から声をかけたかもしれない。
お互いの食の体験を綴った文章を手紙という形で交換してみませんか?
かくして、生まれた場所も生活も年齢も価値観も違うふたりの往復書簡が始まろうとしている。ひとりでは出会えない食があり、これから食の体験を見つめ直すことがとても楽しみだ。