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7.7 都知事選 七夕ショック
7月7日の東京都知事選の結果に打ちのめされています。
1.組織の長は組織の病理を代表する
自由で真摯な討論も行われず、権力欲異様に強く、平気で嘘をつき、弱者を馬鹿にし虐めるようなパワハラ系で、なおかつ自惚れ屋で、マッチョな言動で、内実は薄っぺらな候補者が勝ったり、躍進してしまったことに恐れおののいています。
岸田秀(精神分析学者)さんの言葉だったでしょうか「組織の長はその組織の病理を代表する。」
東京都民の病理が白日の下に晒された日になってしまったように思います。
2.政治的熟議の喪失
私にとって、2024年7月7日(七夕)は絶望の日になってしまいました。
日本の政治から、話合い・対話・議論・熟議という概念と行為が失われて久しいですが、日本人の病理を代表する者たちの横暴で独断的政治が、ますます横行するようになっていくのでしょう。
他者の声に、特に弱者の声に耳を傾けず、一方的な威勢の良い言説を撒き散らすだけの政治家。一見、強いリーダーシップがあるかのような錯覚を与える詐欺師的で薄っぺらな政治家がのさばる時代が到来しているのです。
このような事態をもたらした日本人はまるで、DV親爺に必死にすがりつく妻子のような者なのでしょうか?
かなり痛めつけられているけれど、それを認めたくない?
隣の親爺が悪い?
3.「論破」の蔓延と言葉・概念の喪失
政治的な場面だけではなく会話を続けていくことを妨げる「論破!」が日常的に蔓延してしまっています。言い切ってしまえば勝ちなのです。
また、現代は、言葉による対話が成立しない時代、言葉が意味をなさない時代になってしまったともいえるでしょう。
現代人は「ヤバイ」「エグイ」「ムリ―」のような短い言葉でさまざまな感情をアバウトに表現したり、SNSで使われる絵文字、感情記号で感情だけを効率的で簡便、端的な表現に浸っています。
全てが感情化される時代なのかもしれません。そこにはもう論理、議論、会話はないのです。
このような、簡便で端的で効率的な言葉・概念では、世の中の事象について、または他者について、解像度の非常に低い認識、理解しか得られません。
さらに、話や文章は、何でも分かり易く簡便でないといけないという風潮もありますが、それは、「世界や社会は単純で分かり易いはずだ」という信念に支えられているように思われます。
しかし、世界や社会が単純であるという保証はありません。分かり易さや単純化は多くの要素、要因を排除し、無視して、事象の解像度や理解の深さを犠牲にしてしまうと思います。
4.7.7は世人の仕業
私は、7.7ショックで思い浮かんだのが、ハイデガー(ドイツの哲学者)のいう世人(das Man)という概念です。
7.7が明らかにしたのは、2024年の日本の世人がさらに下品で軽薄なレベルになってきているということかもしれません。
近年のテレビはますます軽薄になってきており、以下のような「空談」の洪水状態です。
世人であるとは、物事を自ら根本的に理解することなく、ひとが「そういうものだ」として共有している既成解釈に従って世界を切り取り、その見方で生きることである。
世人の語りの最大の特徴は、社会が大規模に無知に陥るということにある。こうした世人の語りが「空談」と呼ばれる。
空談が撒き散らされ、「悪夢の民主党時代」とかというデマが既成解釈となり、社会が大規模に無知に陥っていると思います。
空談においては、存在者への存在関連を失ったまま、それがどのように存在する(ように見える)のかだけが伝達される。空談は、真理の重みを省みない迷信やステレオタイプの発生装置だとも言えよう。
世人の無知は、何も知らないという無垢な状態ではなく、むしろ、存在者をそれではないものとして偽装する可能性を高めることに特徴がある。
A候補は凄い!できる!カイロ大学主席卒業だ!
B候補はダメだ!
C候補は二重国籍だ!
D候補はメンタルが強い!覚悟がある!
E候補は返答力が凄い!頭が良い!
上記のように、今までの政治家としての実績や事実関係(存在関連)とは関係なく、~のように見えるということだけがマスゴミやSNSによって伝達され、有権者は実績や事実(真理)に基づかない偽装された候補者像を持つようになり、その偽造されたイメージを基に投票行動するようになるのです。
世人としての日常は、真理が問題にならないと同時に、あるいはだからこそ気がつかないままに、見せかけの世界を固着させるという二重の非真理のなかに生きることだ。この非真理内存在をハイデガーは「頽落」の一側面と見なした。
7.7は、日本人(世人)の劣化、頽落が白日の下に晒された日でした。
世人については以下のnoteをご参照願います。