[読書メモ] じぶん時間を生きる / 佐宗邦威
じぶん時間を生きる TRANSITION
コロナ過をきっかけに人生の時間の使い方を再定義し直して、軽井沢への移住によって「じぶん時間の生き方」を実践した作者の考察について余すことなく記録している。じぶん時間を持つことによる相反する感情との向き合い方や、移住に伴うメリットとデメリットが記載されていてとても参考になる。個人というより人類の生活スタイルの転換期であることを認識できる一冊。
・アンビバレント(ambivalent):両義的。二つの対立する感情や考え方を同時に持つこと
ニュートラルゾーンは、新卒の就職活動時期の感覚と似ている。自分自身の「得意」と「不得意」や、「向き」と「不向き」を自己認識し、様々な企業を見たり体験することで興味のベクトルがどこに向いているのかを確認する作業。
個人のビジョンにせよ企業のビジョンにせよ、ビジョンには嘘がないことが大切。ビジョンは恣意的であってもいけないし、人を意図的に誘導するようなものでもいけない。人の根幹の部分で共感できるビジョンが良いビジョンといえる。
具体的な行動を物理的に起こさない限りは、自分自身の周囲の環境は変わらないということ。
とは言え、住む場所・職場や付き合う人を変えることは直接的に環境を変るため、少なからず自分自身の周囲の人間を巻き込むことになってしまう。
一方で、時間配分を変える行動は自分自身の影響だけに留めることができるものも多い。起きる時間や寝る時間を変える行動変化だけでも、多少の変化を生じさせることができるかもしれない。
・ベンチマーク(benchmark):特定の基準や基準点として使用されるもの
ベンチマーク(比較基準)が無い分、基準は自分自身で決めるしかない。基準を自分自身で決めることができるとも言える。自分自身の物差しを改めて見直す必要があるかもしれない。また、他人の物差しを尊重する態度も必要になるだろう。
まったく知らなかった知識。これを知っていると、不揃いの野菜を見た時に何の躊躇も無く選ぶことができそう。
資本主義社会によって時間は不可逆となり、経済的な成長だけが直線的な時間の間隔で唯一の価値だった。確かに、経済成長や資源枯渇などの概念を無くすと地球の自転のように時間はただの繰り返しだと考えることもできる。繰り返す時間の中で、自分の有限時間をどのように生きるのかを見直す時間を定期的に持つようにしたい。
・コンサマトリー(Consummatory):楽しみや喜びを得るための行為や活動のこと。美食家が美味しい料理を楽しむことを「consummatory pleasure(完結的な喜び)」と言うことがある。
・インストゥルメンタル(instrumental):道具主義ともいう。目的達成のための行為や行動を、道具や手段と考えること。
・プロセスエコノミー:商品や制作物といったアウトプットだけではなく、それらを生み出す過程(プロセス)自体が収益をもたらすという考え方やそれを実現した経済
未来の目的に偏重することなく今の時間を大切にする考え方は、メンタルケアの観点でも非常に重要になってきている。また、目的よりも行為を重視する考え方はプロセスエコノミーにも通じる考え方。
コンサマトリーとインストゥルメンタルについては、下記で詳しく解説されている。
「自己決定」は非常に重要なキーワードになりそう。一方で「自己決定」を促したり「自己決定」の力を養う教育はとても難しい。「自己決定」にはある程度の人生経験や判断材料が必要になるから、その経験や判断材料を用意できる仕組みがあれば人それぞれにマッチした「自己決定」ができるようになるかもしれない。