ジェフ・ベゾスの生声
著名な実業家の実際に発せられた発言をピックアップする「生声シリーズ」のひとつ。米国の巨大企業アマゾンの創業者ジェフ・ベゾスの実際の発言をもとに編集されている。本書を通じてジェフ・ベゾスの人類が進化することへの熱望と、技術革新に向けて取り組む上でのビジョンを知り大いに共感した。企業の名声よりもサービスに対する顧客のフィードバックを重視しており、すべての発言に一貫性があり強い情熱を感じる。
後悔を最小限に
有限の人生の中で人生の下期になってくると、より選択と決断が重要になってくる。50代、60代、70代に今と同じ体力と能力が維持できなくなることも想定して、今後何をするべきかを選択する必要がある。決断や判断をするときの重要な基準は「後悔しないこと」に尽きる。若い頃はやらなかったことに対して後悔しないことが重要だが、年齢を重ねるとやってしまったことに対する後悔をしないことの方が重要かもしれない。
「本屋」から「何でも屋」へ
amazonは「ありとあらゆる品揃え」を最初は本の流通というカテゴリで実行して、全てのカテゴリに網羅されて現在に至る。amazonのショッピングサイトは今や誰もが使っているし、「ありとあらゆる品揃え」に異論を唱える人はいない。戦略や戦術よりも「ありとあらゆる品揃えの提供」というビジョンがまずは重要で、このビジョンがぶれなければ、ビジネスの戦術が途中で失敗したとしても別の戦術に切り替えればよい。日本のコンビニエンスストアやドラッグストアも似たような利便性を顧客に提供できてはいるが、「ありとあらゆる品揃えの提供」のようなビジョンはあまり感じられない気がする。その代わり「24時間365日いつでも開いているいる店」が、コンビニのぶれないビジョンだと考えると納得できる。
やらなかったこと
年齢を重ねるとやってしまった後悔をしないことも重要だが、どんな年齢でもその瞬間に出来ることであれば何でもやった方が良い。すぐに出来ることや簡単に始められたことをやらなかったときが一番後悔をする。
未来に向けて生きる
GAFAを始めとする偉大な起業家・事業家に共通している点は、未来について考えるときに自分だけの未来ではなく、人類の未来を考えている点。お金は未来を実現するための資材であり、自分や家族が贅沢をするためだけに持つものではない。この感覚を持つには、自分の生活に対して「我唯足知(われ、ただ足るを知る」の気持ちが最初になければならない。
本というテクノロジー
これは深く考えさせられる言葉。文字を記録して情報を流通させるという目的を実現するために、テクノロジーの進化を辿ってきたものが本であることに改めて気付かされる。そう考えると、紙から電子書籍に移り変わることも、テクノロジー進化の続きに他ならない。
2つの道
顧客のニーズに応えるのではなく、顧客のニーズから予想するという点が大切。今必要とされる顧客のニーズは誰にでも応えることができるが、未来のニーズはすぐには応えられない。今後の展開を予想しながら、テクノロジーの力でそれを実現する準備を(すなわち技術の開発を)することが出来る企業が、これまでの技術革新を成功させてきた。
たった1人の顧客
何かの事業を起こすときマーケットサイズや万人に受けるプロダクトを作ることに目がくらみがちだが、沢山の顧客の要望を満たすプロダクトは結果的にどこにでもあるつまらないものになってしまうことが多い。何かの事業を成し遂げようとするときには、特定の誰かのためのサービスを作るくらいの気概でプロダクトを開発した方が、唯一無二のサービスが出来る。
どこまでも満足しない
人間は満足しない性質だからこそ進化する。他の生物は種の繁栄・存続を優先するから、ほとんど進化しない生物も多く存在する。人間も外見的な進化は他の動物と同様に緩やかだけど、後天的な脳の入出力(学習)によって劇的な進化を遂げてきた。既知の学習に満足できない人が学者や発明家や起業家になり、さらなる人類の進化を加速させている。
芯
絶対にぶれない芯がビジョンであり、ユーザに確かな価値を届けることに強くこだわっている。Amazonはまさに世間から脚光を浴び続けている企業だが、それに甘んじることなく次々と新しいサービス・価値を提供し、進化し続けることができる企業の「芯」はここにある。
パーティの主催者
これも「会社は脚光を浴びることに注力すべきではない」という発言と、本質的には同じことを言っている。顧客のためのサービスが、自社のためのサービスになってはいけない。サービスに価値を感じてユーザーが対価を払うというモデルは、モノ売りでもコト売りでも変わらない。