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コピー上等な時代に、絶対に真似できないものと戦略論の話。
親しい友人に勧められたままに購入してざっと読みした本書。背骨となる問題定義は「サイエンス重視の意思決定では、今日の複雑で不安定な世界においてビジネスの舵取りはできない」というもの。
世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?|経営における「アート」と「サイエンス」
結論としては本書のタイトルにもある通り「美意識(アートの感覚)」だ大事だという話。そしてその理由をシンプル3つに因数分解するとこうだ。
1. 論理的・理性的スキルの限界=正解のコモディティ化2. 世界中の消費が「自己実現的な消費」へ3. システムの変化にルールの変更がおいつかない
特に興味深かったのは1に関して。なので、ここではもうちょっと脱線しつつ深ぼってみる。
1で強調されるのは、みんなサイエンスを追い求めてロジカルな正解を突き詰めれば行き着く先は一緒という話。競争戦略の本質である「他社との差別化」はサイエンスを突き詰めると皮肉にも逆にはたらくということですね。これは「ストーリーとしての競争戦略」でも散々語られている本質で、ちなみにそこではその差別化において大事なのはいわゆる戦略的な意思決定であるポジショニング(SP:Strategic Positioning)ではなく、日々の見えない組織の改善/ルーティン力(OC:Organizational Capability)と解いています。
つまりローソンのナチュラルローソンみたいなものがSP(戦略的なポジショニング)で、セブンイレブンの改善/ルーチン力がOCということですね。結果、OCドリブンのセブンイレブンが優っているという論理です。
ただし、OCだって究極は調べ尽くせば真似はできてしまうわけであって、ここで本書に話を戻すと、サイエンス vs アートと言う観点で以下のように論じています。
デザインとテクノロジーというのは、サイエンスの力によって用意、かつ徹底的にコピーすることが可能だからです。いわゆるリバースエンジニアリングです。一方で、ストーリーと世界観はコピーできない。
私としては「カルチャー/ブランド」という言い回しの方が好きですが、結局中長期で競争優位を築いていくとういうことは、強固な文化/ブランドを育てるということに他ならないですね。
Airbnbは明確に「デザイン/カルチャー/ブランド」が何よりも大事であると意識してある種戦略的に会社を創ってきています。
こちらでも書きましたが、さらに遡るとその競争優位の源泉というのは、従業員そのものなんですね。彼らがカルチャーを創る、対外的なエヴァンジェリストとなり、その熱量がユーザーに伝播し、コアなファンができ、そしてブランドが創られる、というストーリー。故に、彼らの組織には人事部がなく、代わりに Employee Experience という組織があります。この辺りは別のnoteで。
ちなみに本書の論旨をざっくり書くと、「ゆえに経営にもアートが必要である」というタイトル通りの内容なのですが、私的には以下のようにまとめたい。
この複雑で変化が速く大きな時代において、コピーできないもの。それは究極突き詰めればあなたの、その目の前の、「人」である、と。
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