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もし社長との年内最後の1on1が箱根駅伝5区を駆け上りながらだったら。
2020年12月29日。
箱根湯本は例年よりも暖かい朝を迎えていた。
ランニングシューズとウェアに身を包み、パソコンは駅前のコインロッカーに預け、これから始まる年内最後の1on1に思いを馳せる。
2020年という荒波の羅針盤となってくれた毎週30分の1on1。
今振り返ると、この1年間で様々な経営上の重要な意思決定や、事業上のクリティカルなアイディアや、健全な組織を育む源泉となってくれていた。
午前8時30分。箱根湯本の改札から現れたのは、ラントリップ代表の大森英一郎。元箱根駅伝ランナーであり、私のボスであり、リスペクトしてやまない友人でもある。そんな彼と、これから2020年の総仕上げとなる年内最後の1on1だ。
しかも箱根駅伝屈指の難コース、高低差864mを一気に駆け上がる「5区」を駆け上がりながら。
1年を振り返る、孤高のルーティン
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時計の針を、7年前に戻してみる。
毎年年末に自らの仕事を中心とした「振り返り」の所作は、学生時代からごくごく自然に染み付いていて、それを何を思ったか「箱根の山登り」を兼ねて1DAYで行うルーティンが始まりました。
ランナーとして、一度は走破してみたいと思う天下の険、箱根峠。
そんなランナーとしての欲と、振り返りのルーティンを、その年は重ね合わせてみることにしました。
あくまで自分ひとりで。自らの1年を振り返る1DAYトリップ。
年始の恒例イベント「箱根駅伝」往路の最終区間を、1度でもテレビ等でご覧になった方、もしくは実際にその道を車で走ったり、もしくは駆け上がった経験のある稀有な方は分かるかもしれませんが、ただひたすらに登り続けるかなりストイックな道が国道1号線、箱根峠の最高地点874mを経由するこの「5区」なんですね。
それが、7年前から続けている年末孤高のルーティン。
私が大森やラントリップと出会う前に、自らのブログでもこんな形で紹介していました。
そんな「走ること」の1年の集大成として箱根の山を登り切るというのが、まぁなんとも爽快なんです。書きたいことはただそれだけです。ただひたすら曲がりくねったロードを駆け上がる、真冬の箱根なんて下手したら氷点下になります。走り続けて登り切るのは本当に辛いのですが、ひたすら15kmぐらい登り続けて、この上の写真にある国道1号線の最高地点(874m)まで登りきった時の「あぁ、今年もなんとか走り切れた」という安堵感と、そこから一気に降って芦ノ湖のゴールに向けて走る疾走感がまた最高なのですよね。その後に温泉&ビールも待っていますしね。年の最後に、苦行を通じて自分の成長を噛み締め、自己肯定してあげる作業です。
毎年一人で身体的にもがき苦しみながら物理的に山を登りきる。その安堵感でなんとか1年の頑張りを肯定してあげる。わざわざ孤独にそんなことをやり続けている自分に、これを書きながら根暗な性根を感じざるを得ませんが、2020年はちょっとしたきっかけで孤独のルーティンを脱するイベントになりました。
2020年は本当に激動の年でした。
それは世界にとっても、ラントリップにとっても。
積み残した今年の振り返りと、来年への仕込み。
「1on1の延長戦、ロングバージョンをどこかでやらないと締まらないね。」
そんな会話から、今回は初めて「孤独な所作」を「共同作業」に移行する事となりました。
最も多くを語らなかったが、最も多くを交わした山登り。
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このルーティン。
一つだけ自分に課したルールがあります。それは、
「最初から最後まで走り続ける事。苦しい、辛いという理由で立ち止まったり歩いたりしないこと。」
箱根の5区は、日テレの絵で見るよりもたぶん13倍ぐらい劇坂です。
そして実際に駆け上る辛さと、駆け上り続ける厳しさは、想像の25倍ぐらいだと思います。
箱根湯本駅からスタートしてだいたい15kmぐらいは、本当に休みなくただ登り続けるだけのコース。しかも勾配は途中でさらにキツくなるし、平坦な箇所は泣けるぐらい一瞬で終わります。
だからこそ
「辛いだけで足を止めたら、1年の努力が全部無駄になるぞ」
という謎のプレッシャーを自分にかけて、毎年苦痛に歪む汚い顔をしながらこの山を登り続けてきました。
だからこそ
最高地点まで登りった時の達成感や安堵感が、1年の頑張りを自分でもびっくりするぐらいのあたたかい追い風で肯定してくれるんですね。
そんな区間での年内最後の1on1。
結論から言うと、当たり前ですがほとんど喋れる訳がないんです(笑
前を走る私と、
追走する大森。
言葉を交わしたのは全行程の5%程度でしょうか。
あとはひたすらに、心拍を上げ続けながら、大きめの吐息を繰り返しながら「キツイねー!」など言いながら登り続けました。
彼とはこの一年本当にたくさんの会話をしてきました。
もちろん1on1に限らず、
ラントリップの経営を、
ラントリップのチーム、
コロナに憂う世界を、
そして家族のことを。
酸いも甘いも噛み分けながら、
市場の清濁を合わせ飲みながら、
「走ること」の可能性を信じながら。
そんな年内最後の1on1は、2020年の会話の中で最も語らない(語れない笑)時間となりました。
しかし、最も多くを交わした濃密な時間だったように思います。
前を走る私には、彼の足音と微かに聞こえる吐息がただひたすらにBGMとして流れていました。
そんなBGMには、しかし何か全てに意味があって、
この一年交わしてきたもの以上の深い意味が旋律となって乗っていました。
足音と吐息は、一定のリズムを刻み続けながら共に箱根の山を駆け上り、
最高地点となる「874m」の看板にたどり着いた時の達成感と安堵は、
まさに2020年の激動を走り続けた先にあった、
ラントリップの達成感と安堵そのものだったような気がします。
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悲しいかな、登りで使い切ってしまった私の「足」は、登頂後の疾走感をダイレクトに味わえる芦ノ湖までのダウンヒルを全力疾走する力を残していませんでした。
大森に先行を譲り、彼が芦ノ湖にゴールしてから程なくして、暖かく彼と箱根駅伝のシンボルタワーに迎え入れてもらいました。
本当の1on1。
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この山登り。
言ってしまえばあくまで儀式です。
実際に言葉を尽くして話合わないと解決しない問題、擦り合わない計画は山住みです(笑
その後箱根の良質な温泉に浸かって疲れを癒し、
風情ある名店のそばで空っぽになったお腹を満たし、
(史上最も上手いビールで喉を潤し)
文字通り1on1延長戦としてダラダラと事業のこと、文化のこと、チームの事を飽きるぐらい話続けました。
日が暮れるまでなんだか色々話し、
その結果を2021年の仕事始めとして実際に消化しはじめている訳ですが、
多くを語らなかった
(語れなかった)
あの箱根山登りの区間ほど、濃い時間は無かったなと振り返ります。
会社は共通のミッションを達成するためのゲゼルシャフトです。
血縁で繋がったゲマインシャフトとは異なり、
自分一人ではできない、何か大きな事を成し遂げるために集まった機能集団です。
故に、仕事の時間というのはどうしても目に見えるもの、言葉で交わせるものが当たり前ですが優先されます。
当然、そうしないと仕事は前に進みません。
しかし、
同じビジョン・ミッションを共有し、
真に良い世界を本気で創ろうとする志を共有した仲間と、
時には言葉を交わさずに「身体」を伴って何か大きな壁を登ってみること。
そこで目には見えない「エール」を交換することは、
何か「言語」以上に重要な意味を持っていることを感じざるを得ませんでした。
そんな2020年のおわり。
そして、
2021年のはじまり。
ラントリップの飛躍を、あらためて確信しています。
箱根を走る4日前に出したリリース。
これ以上に、ワクワクする未来が2021年はたくさん待っています。
=== おわり ===
ここで宣伝です(爆
ラントリップは
「もっと自由に、楽しく走れる世界」
を目指す、新しい文化と世界中の人たちの幸福を願うスタートアップです。
2021年の躍進には、もっと大きな力が必要です。
全力採用中です。
ぜひ少しでも興味があればご連絡お待ちしています!
安心してください。
1on1を、箱根の山を登りながらしたりしませんから。
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