持久力競技アスリートのパフォーマンスを最大化する血糖コントロールのポイント
持続的グルコースモニタリング装置(CGM)は、長期のグルコース変動が見えることから、長時間エクササイズを行う持久系競技において、競技中のパフォーマンスの向上/保持/低下を正確にモニタリング可能です。
そして、エクササイズ前後の血糖変動から、その原因の追究などが可能になります。持久系アスリートは、以下の項目をポイントとして、血糖コントロールを行なうことでパフォーマンスを発揮しやすくなります。
血糖と運動:
インスリン、グルカゴン、筋収縮が血糖ホメオスタシス(バランス維持)に関与しています。運動中には筋収縮が主なグルコース低下メカニズムとなり、インスリンレベルが低下します*1。運動強度が高まる、または、試合本番による緊張・興奮が高まると、アドレナリンなどのストレスホルモンの分泌によって、肝臓からのグルコース放出が増加します*2。
持久系アスリートにおける血糖の運用:
運動時に筋肉のグルコース摂取が休息時に比べて増加することが示されています*3。運動中の血糖コントロールは休息時と異なり、持久系トレーニングを積んだアスリートでは、高強度活動中に血糖値が上昇する傾向があります。グルコース消費が盛んに行われる競技中には、上手にエネルギーを使っていく必要があります。一般的に、グリコーゲンというグルコースの貯蔵物質は、筋肉に8割、肝臓中に2割貯蔵されています。運動中に、筋肉中のグリコーゲンが使い切ると、肝グリコーゲンが補給されます。また、フルマラソンなどでは、体内中のグリコーゲン全てをもってしても消費エネルギーは補うことができないとされています。ですので、競技中の補食や、脂肪、乳酸、アミノ酸代謝によるエネルギー供給でサポートしていく必要があります。
低血糖と高血糖:
ウルトラマラソンや、ロードバイクなどで、エネルギーの枯渇による低血糖症状が見られることがあります。グリコーゲンの枯渇のほかに、試合本番での緊張・興奮、集中力向上による、パフォーマンス時の高血糖イベントも影響してきますので、気持ちのコントロールによるグリコーゲン消費の制御は、持久系アスリートにとって必須の課題となります。
睡眠と血糖:
グリコーゲンの貯蔵に関して、試合直前ではなく、1週間〜数日前から緊張や興奮により、睡眠時に交感神経が興奮していると、ストレスホルモンによる肝グリコーゲンの分解が促進されます。よって、肝臓には、グリコーゲンローディングがうまくいかず、試合中にエネルギーの枯渇が起こる可能性が高まります。睡眠中のグリコーゲン消費を抑えるために、試合直前まではリラックスすることが勧められます。
運動中の血糖モニタリング:
血糖と間質液中のグルコースには違いがありますが、CGMは運動中のグルコース変動、エネルギーバランス、回復状態のモニタリングに有用なツールです。SympaFitは、レース中数時間での血糖変動を分析することが可能であり、ガス欠が起きた瞬間や、原因などを明らかにすることが可能です。
*1: Richter, E.A., Sylow, L., Hargreaves, M. "Interactions between insulin and exercise." Biochem J., vol. 478, p.3827-3846 (2021).
*2: American Diabetes Association“Why Does Exercise Sometimes Raise Blood Glucose?”https://diabetes.org/health-wellness/fitness/why-does-exercise-sometimes-raise-blood-sugar
*3: Katz, A., Broberg, S., Sahlin, K., Wahren, J. "Leg glucose uptake during maximal dynamic exercise in humans." Am. J. Physiol., vol. 251, p.E65–E70 (1986).