試合前のベストな食事タイミングとは?
いつ食事を取れば試合本番で最大のパフォーマンスが出せるのか?
SympaFitは、激しい運動や試合の2時間前に補食や食事を済ませることを推奨しています。激しい運動や試合の直前に補食や食事をすると、低血糖を引き起こし、パフォーマンスの低下を招いてしまう可能性があるためです。
後半のスタミナ切れが不安な場合でも心配ありません。試合直前にエネルギーを溜め込むことは難しく、また、体内に数日前から貯蔵されているエネル
ギーで、実質的なエネルギー不足が起きることはありません。
食事後は、血糖値が上昇し、約2時間で元の血糖値に戻る
一般的に、血糖値は100 mg/dL前後に保たれていますが、糖質を摂取したときには150〜200 mg/dL程度まで上昇します。その後、血糖値はインスリンの働きによって、糖質摂取前の100 mg/dL前後まで下がります。
この血糖値の上がり方が急であると(短時間で糖を吸収してしまうと)、いわゆる血糖値スパイクと言われ、血糖値は急に上昇し、インスリンもそれに反応して一気に分泌され、急に血糖値は下降します。
一方で、糖の吸収を緩やかにすることによって、血糖値は緩やかに上昇し、緩やかに下降します。
激しい運動や試合の2時間前には食事を済ませよう
アスリートの場合、糖質を摂取して血糖値が落ち着いてから運動、または試合に望むことが好ましいです。
なぜなら、糖質を運動直前に取ると、インスリンによる血糖値の低下と、運動による血中の糖の消費が相まって、低血糖を引き起こしやすいからです。
これをインスリンショックと言い、血糖値の低下によるだるさやパフォーマンスの低下を招いてしまいます(*1)。よって、アスリートは、激しい運動や試合の2時間前には、補食や食事を済ませるよう推奨しています。
数日前から炭水化物多めの食事を取ることでパフォーマンスを発揮しやすくなる
試合直前の食事は、インスリンによる血糖値低下によってパフォーマンスに影響を及ぼすだけでなく、血管内に糖分を貯めることはできないことがわかっています。
したがって、試合直前にエネルギーを溜め込むことを目的として、糖質を大量に摂取することは逆効果になる恐れがあります。
糖質を貯蓄する方法として、生物は、糖分をグリコーゲンという形で、骨格筋と肝臓に貯蓄しています。ヒトの場合、骨格筋に約400 g(1600 kcal)、肝臓に約100 g(400 kcal)のグリコーゲンが貯蓄されます。グリコーゲンは、急には貯蔵できないので、グリコーゲンのキャパシティいっぱいにエネルギーの貯金を作るには、数日前から炭水化物多めの食事(カーボローディング等)によって、グリコーゲンとして糖質を貯蔵することによって、エネルギーはフルに貯めることが可能です。
ちなみに、アルコールの分解に肝臓中のグリコーゲンは使われるので、マラソン前の数日間は、アルコール摂取はおすすめできないということになります。
エネルギー枯渇の不安への対処
とはいえ、長時間の試合など、後半のスタミナ切れが不安になると思います。
体内の貯蔵グリコーゲン最大500 gは、高強度のフルマラソンくらいにならないと枯渇することはありません。よって、多くのスポーツ競技は、試合前2時間前くらいの補食によるエネルギー補給で、実質的なエネルギー不足は起きません。
気持ち的な部分で糖質を直前に補給したい場合は、バナナやゼリーなど固形物を含む糖質をゆっくり摂取することをおすすめします。
一方、フルマラソンでは、レース中にインスリンショックがおこらないよう、かつ吸収を早める糖質補給が大切になってきます。それに加え、筋肉中のグリコーゲンが枯渇するいわゆる30 kmの壁を乗り越えるために、肝臓中のグリコーゲンをエネルギーとして使用できるよう、うまくアドレナリンを出していくことが重要となります。
まとめ
試合開始2時間以内の食事は、インスリンによる血糖値の低下と、運動による血中の糖の消費が相まって、低血糖(エネルギーの低下)を引き起こす可能性があります。SympaFitでは、激しい運動や試合の2時間前に補食や食事を済ませることを推奨しています。
また、試合直前にエネルギーを溜め込むことは難しいため、試合数日前から炭水化物多めの食事によって体内にエネルギーを貯蔵することが重要です。
参考文献:
1. F. West, E. Bond, J. Shurley, C. Meyers “Insulin coma therapy in schizophrenia; a fourteen-year follow-up study” Am J Psychiatry 111, 583-589 (1955).