コロナで様変わりしたクリニック経営環境への対応策
患者の受診控えが医療機関の経営に打撃
当社は、コロナ禍において非常に早く完全リモートワークに移行し、営業面でもお客様である医療機関様や関係会社様とのオンラインでの商談、面談がかなり増えました。
当社は各拠点の営業エリアが広く、営業はかなり広範囲を回っている関係から様々な地域のお話をお聞きします。
そういった中で、どのエリアでも共通してほとんどの医療機関がcovid19の影響による患者の受診控えによる患者減少に悩んでいらっしゃるお話をお聞きします。
今回はこのような状況下でも比較的対応ができているクリニックでの取り組み事例を中心に少しご紹介できればと思います。
クリニックが今の状況下で患者に来てもらうための工夫
医療機関の中には待合室をなくし、大規模なパーテーションを作る等の物理的な対策を行い患者の院内感染への不安を意識した導線を確保しているところもあります。 また、LINEを始めtwitterやinstagram等のSNSを使って換気や消毒などの徹底による感染予防を告知されているところもあります。
しかし、それらを大々的に始める、行うことは時間的、費用的なコストがかかることとコストに見合う即効性も期待できないため、今回は比較的すぐに始められる取り組みを3点ほどご紹介出来ればと思います。
1. 受診したい、しないといけない患者の潜在的な来院需要の顕在化
普段定期的に薬の処方や定期健診に通ってくれる患者さんに対して来院を誘導します。先にSNSを使った発信について記載しましたが、こちらはある程度不特定多数に対するもので、これらの告知手法を普段から取り入れているクリニックにとってはまだ良いですが、多くの場合は患者の心理に届く効果は低いと思われます。
そこで大事なのが、今出来ることとして初診患者の取り込みよりも本来来てもらいたい患者への来院促進が重要となります。特に患者との関係性によってはこちらからメール、また電話などで状況を聞き出し受診を促すことや、今実際に来院されている患者さんに対して対面で次回の来院を促すことはより効果があります。
例えば既存患者に取り入れている感染症対策のメールを送って安心して受診を促すことや、定期受診等で薬が切れていそうな患者に対するフォローアップの連絡等です。患者のメールアドレスを取得していない医療機関も多いですが、予約システム等を採用している場合はそれらから取得することも可能です。
ちなみに、普段から激しい競争環境下での歯科等ではクリーニング等の定期受診の患者に対してこれらの取り組みを普段から取り入れています。
2.完全日時予約への切り替え
二つ目の対策としては完全時間予約への切り替えが挙げられます。
小児科、耳鼻科を始め各科目において現在は時間より順番で運用されている医療機関は多いと思います。予約システムを採用しているクリニックは、順番での運用を時間枠での運用に切り替えます。多くの予約システムでは順番機能だけでなく、時間予約の機能も持っており、完全時間予約制に切り替えることで診療効率を犠牲にしつつも、それ以上に患者にとっての安心感の確保に繋げることができます。予約システムを採用していない場合はアナログですが、電話対応によりノートやエクセル管理をする方法や簡単な時間予約だと無料で使える予約システム等もあります。
あくまでこれはコロナが収まるまでの時限措置ですが、例えば5分程度の短い枠でも完全時間予約制に移行することで患者に対して安心感を提供出来るメリットが出ます。同時に、クリニックにおいても先の来院枠が埋まるのが見えるので経営において心理的な安心をもたらします。特に今は多くの医療機関においてこれまでのように多くの患者を捌くことを重点に置く必要がないため、通常よりもむしろ患者満足度も高めることができます。
3.オンライン診療、電話診療を取り入れる
最後が、オンライン診療・電話診療についてです。俄かに注目を集めており、医療機関でも患者減少に伴い採用するクリニックが急増しています。一部オンライン医療システム提供会社では 4月に前月比で約10倍に利用が増えたところもあります。
※オンライン診療に関して弊社加藤が記事を書いていますので、こちらも是非ご参照ください。
ただ、現状課題もありオンライン診療における院内運用や目的、対象患者を明確にしてから導入しないとオンラインでの受診の患者を増やす以上に逆に現在のオペレーションに混乱をきたす可能性も大いにあります。そこで、オンライン診療を導入する場合はシステム導入することより運用を工夫することが必要になります。
オンライン診療、電話診療を取り入れる場合のポイント
1.診療内容(提供サービス)の明確化
患者側ではオンライン診療が可能な内容がどのような物か分からないため、HP等で詳しく受けれる診療内容を記載してあげることが重要になります。また、症状ごとに簡潔にオンラインでの診療対応出来る疾患を記載してあげること、おおよその費用の目安や流れなども合わせて記載することで患者はオンラインでの診療に理解と安心をもって受診することが出来ます。
2.通常受診とオンライン受診での時間の分離
院内での診療とオンライン診療を同時間帯に行うと院内業務に混乱が生じる可能性があります。また患者側ではオンラインで診療開始まで待機する必要があるので、診療開始時間がずれ込んだり、遅れが生じると受診キャンセルや満足度の低下が懸念されます。これは特に、普段順番での受付をしている科目で顕著に生じます。そういう理由からオンライン診療は順番でなく、時間予約の方が親和性が圧倒的に高くなります。
そこで、最初は来院での受診とオンライン受診の時間帯を分けることをお勧めします。例えば、9時から12時半の診療時間の場合、9時から11時半までを来院での受付で、11時半から12時半までをオンラインでの受付という形にします。
ただ、それだとこれまでの時間に慣れた患者さんの飛び入りでの来院が予測されるので、オンライン診療の予約に関してある程度余裕を持って枠の確保を行い、余った枠内で通常来院患者の診療を行います。
例えば、本来患者一人に予測される診療時間が5分であれば、1時間のオンライン診療の枠を半分の6人分取り、その残りの時間で来院患者の対応を行います。なお、特にオンラインでの受診が初めての場合の患者に対してはオンライン患者を優先することで満足度の向上になりリピート利用に繋がります。
また、他の方法としては現在の診療時間以外にオンライン診療時間を作ることです。例えば平日の夜、また土曜日の昼などにオンライン専用の受診可能期間を設けると会社員や遠方の方、都合によりこれまで来院しにくかった方、来院は抵抗があるけど、薬の処方をメインに希望している患者へ広く診療機会を提供することが可能になります。
ここまでのまとめ
コロナ禍における今、各医療機関で取りうる受診促進の手段として、以下の3つをご紹介しました。
① 既存患者へのリアルでの受診案内、関係性の構築
② 完全時間予約等への院内オペレーションの変更
③ オンライン診療を使った受診機会の提供
もちろん、これらを組み合わせるとより効果を発揮すると思います。
いずれの策においても今大事にするべきはまさに今医療機関に通って来て くれる目の前の患者さんの満足度を上げることです。そうすることによりコロナ収束後も自院へのロイヤリティが高い患者さんの来院が期待できます。
大きな流れは変えることは出来ませんが、各クリニック単位では出来ることは間違いなくあります。ご参考になれば幸いです。
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