ふたりのプロ作家誕生に遭遇した思い出
ふと思い出したのだけれど、
かつて、下町のさる文人の資料館に勤めていた時、
そこの職員の身内から、プロの作家が二人誕生した慶事に立ち合ったことがありました。
おひとりは、職員の旦那さんで、なんとその年のファンタジーノベル大賞を受賞したかた。
私は直接の知り合いではないものの、その職場では皆さん顔見知りということで、全員でお祝いをお贈りし、
そのご挨拶にみえた時にお目にかかりました。
もうおひとりは、日を限っていらしていた職員のかたの息子さんでした。
たまたま休憩時間に私が本を読んでいたら、
「あなた、小説好き?」
と職員さんが声をかけてきてくれて、そりゃ大好きです、と答えたら、
「あたしの息子が作家になって、本を出したのよ。よければあげる」
と、その場で処女作の文庫本をポケットから出して、ポンとくださいました。
ちょっと独創的なイメージのおばさまでしたが、
そのお母さんとのいきさつが、ご子息が作家になるきっかけをつくられたと、その後、何かで読んだ記憶があります。
その作家さんは、野崎まどさん。
いただいた文庫は、デビュー作の『アムリタ』でした。
第16回電撃小説大賞・メディアワークス文庫賞の初の受賞作だそうで。
きっかけが強烈な印象だったこともあり、
以来、畏れながら、いつかご自身に会ってお話ししてみたい筆頭の作家さんで(ご自身の詳細を表に出さないタイプのかたのようですが)、
強烈なインパクトが印象的で、折々作品をチェックしています。
あのお母さまにもまたお会いしたいな。
個人的事情により、全部を読破しているわけではないですが、
この作品が一番好き。
しばらくこの作品の異世界感が、私の現実思考に侵食して、抜け出せなかったくらい印象的でした。
最近出たという新刊も、ぜひ読みたいです。