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『枕草子』眞琴朗詠 第二段「ころは」③三月〜四月


さて、第二段・三回目の概略。

三月・四月は、
花ほころぶ春から、若々しい初夏の風情、
それにつけても、特にウキウキと心浮き立つ行事が控える頃。

三月三日は上巳・桃の節句。
うららかな春の陽気に、桃、柳が芽吹き、
桜の頃となると、殿方の装いも桜の風情の趣が語られます。

四月は、賀茂祭、葵祭の候。
旧暦なので、今とは月は異なりますが、祭りを控えるこの頃の、初夏の若緑にホトトギスの風情がまず語られ、
祭り近くなると、晴れの当日に参列するも見物するも、そわそわ、そそくさと準備する人々の様子が見られるようになります。
この時代は、今のような既成服があるわけでもなく、それぞれが倣いにより、分相応に適う範囲で支度を整え、この時ならでは着られる装いを整えます。
今の時代の、整えられた催事とは違い、ウキウキとしつつも、個々の世知辛さもあり、
それでもやはり、常ならぬ晴れの祭りは楽しみ。

ここでも、今の私達が、絵巻物のように絢爛に美しい世界として連想する平安時代ではなく、
けなげで卑小なところまで、現実の人の世を、飾り気なく遠慮なく俯瞰する、
鋭い清少納言の目が光っています。

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