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なぜFF14・DQ10・PSO2NGSは成功してブループロトコルは失敗したのか


0.はじめに

MMORPG好きとして、ブループロトコル(以下、ブルプロ)の失敗はとても残念に思っている。

もう国内で新規にMMORPGに挑戦する人たちはたぶん現れないだろう。

でも万が一そのような酔狂な人たちが現れることがあった場合のためにも、
ブルプロが失敗した理由を「おもしろくない」「つまらない」「出来が悪い」「何もわかっていない」とかそんなふわっとした言葉で片付けてしまわず、ある程度整理してしっかりとテキストで残しておきたいと思った。

1.「問題点」と「失敗した理由」の違い

「なぜブルプロは失敗したのか?」

巷では様々な理由が挙げられている。

  • コンテンツがつまらない

  • コンテンツが少ない

  • エンドコンテンツがない

  • アクションがつまらない

  • 衣装に魅力がない

  • ガチャが渋い

  • 繰り返し作業ばかり

  • お使いばかり

  • 報酬が見合わない

  • 不具合が多い

  • サービス開始が遅すぎ

  • 目標がない

  • UIが悪い

  • 取引ができない

  • チャットが使いにくい

  • MMOっぽくない

  • 古いMMOっぽい

  • マネタイズがダメ

  • プレイヤーの意見を聞かない

  • プレイヤー目線でない

  • etc.

でも大半がピンと来ない。
もちろん失敗には様々な要素が絡むだろうからどれもハズレってわけではないかもしれないけど、大半がちょっと失敗の理由としては弱いと感じる。

というのも、疑問を
「なぜブルプロは失敗したのか?」
から更に一歩進めて
なぜFF14・DQ10・PSO2(NGS)は成功してブルプロは失敗したのか?
と、類似ゲームとの比較をしようとすると大半が説明できなくなってしまう。(「成功」とは商業ベースに乗っているという意味)

FF14・DQ10・PSO2(NGS)のサービス開始時と大差がないものが多い。それと抽象的・あいまいすぎてどうとでもとれてしまうものも多い
程度の違いとかそれらが積もり積もってということかもしれないけど、それらは果たして成功と失敗を分けるほどの差なのか?
いずれにしてもこれだけだと説得力に欠ける。

巷で失敗理由として挙げられているこれらは実際はブルプロの問題点であり、問題点というのは成功しているゲームにも存在しているわけで、問題点と失敗した理由とは必ずしもイコールではないということなのだろう。

2.ブルプロが失敗した理由

改めて
「なぜFF14・DQ10・PSO2(NGS)は成功してブルプロは失敗したのか?」
と考えたときに、前者と後者の違いでまず思いつくのは、

  • (サービスを開始した)時代が違う

  • IP力が違う

この世界の移り変わりはとても早いので約10年の違いは大きいし、FF・DQ・PSOのIP力は強い。

ただブルプロはサービス開始時に同時接続者数20万人を突破したことから、当初関心を持っていた人は十分な数といえるので、中には時代が変わっても好みが変わらないプレイヤーもそれなりにいるはずだし、IP力がないにも関わらず集客は十分に成功したと考えて良いだろう。となるとFF14・DQ10・PSO2(NGS)が成功してブルプロが失敗した理由は時代やIP力の他にも何かあるはず。

時代やIP力以外で、FF14・DQ10・PSO2(NGS)とブルプロとの大きな違いは、

  • ブルプロはユーザー間取引システムを実装せず経済活動が存在しない

  • ブルプロは衣装はほぼガチャのみで入手可能としたため、基本料金で衣装を入手できず大多数はおしゃれができない

「経済活動」とは、取引に使用するアイテムやゲーム内マネーを入手するための情報収集や移動や戦闘・採集などの一連の行為から、取引所での値付けや物色や入札落札等の一連の行為まで、いわゆる金策を含めた経済に関わる活動全般で、範囲はとても幅広い。
また経済活動が存在するとそれに付随してゲーム内に様々なプラスのメリットが生じる。詳細は※2参照。

「おしゃれ」も同様にそれに関する活動は、衣装を入手するためクエストをしたり材料を集めたりクラフトをしたり購入したりといった一連の行為から、衣装を入手後のコーデを考えたり変更したりする一連の行為まで含み、範囲はとても幅広い。
なお衣装ガチャについては※3参照。本文では「ブルプロを遊んでみた人の大多数は悪名高きガチャ(ルートボックス)に手を出さないので事実上衣装を入手することができない」という程度に留めて話を進める。

取引やおしゃれの可否は、ただ売買ができるかどうかとか外見を変えられるかどうかとかそんなレベルの話ではない。経済活動もおしゃれに関する活動もこのように範囲は広く多岐に渡り、FF14・DQ10・PSO2(NGS)ではゲームプレイの中で占めるウェイトも無視しえない大きさだが、ブルプロはこれらが丸々欠けている。

このことと、ブルプロは集客は成功したもののその繋ぎ止めがうまくいかなかった事実から、

  • FF14・DQ10・PSO2(NGS)のプレイヤーはそれぞれのゲーム内で経済活動により財を成したりおしゃれで自己表現ができる。そのためにゲーム内で時間をかけてやることがバトル以外にもいろいろあるのでゲームの世界との関わりを深められ、そのゲームをプレイし続けることに価値を見い出せるから商業ベースに乗るくらいにはプレイヤーが残り、ライブサービス型が成り立った。

  • 一方のブルプロは経済活動もないしおしゃれも大多数はできない。やることがバトルくらいしかないのでプレイヤーがブルプロの世界との関わりを深められず、ブルプロをプレイし続けることに価値を見い出せなかったので商業ベースに乗るだけのプレイヤーが残らずに、ライブサービス型が成り立たなかった

と考えられる。

ブルプロを遊びはじめた大多数は、ブルプロのアニメ調の美麗な世界で FF14・DQ10・PSO2(NGS)と同様にいろいろなことをしたかった。でも実際に遊んでみるとできることはバトルだけで「ブルプロはこんなもんか」と思い去っていった。

実際、ブルプロを今現在まで熱心にプレイし続けているのは、バトルだけでなくガチャで衣装を手にしておしゃれもできるようになった限られたプレイヤーがメイン。
もし誰もが普通に衣装を手にしておしゃれができていたなら、現在上で挙げられているような多くの問題点を抱えていたとしてもプレイし続けていた人は意外と多かったのではないだろうか。

平たく言えば、「ブルプロを遊んでみた人の大多数は、バトルしかやることがなくてゲームに深みも感じられないから止めた」。
これがブルプロ失敗の核心だろう。

ブルプロには上で述べたとおりアクションのおもしろさ・UIの出来・衣装の出来・不具合の量・繰り返し作業の多さ・バトルコンテンツの質や量など多くの問題点が挙げられているがそれらはもっと後の話で、そもそもバトルしかできない時点で大多数にプレイし続けてもらえずに失敗することが確定していた。

3.なぜこのような仕様になったのか

ブルプロ上層部は「ブルプロは(MMORPGではなく)オンラインアクションRPGである」と自称していた。

そのようにMMORPGとは名乗らないことでMMORPGのくびきから解き放たれたブルプロを、運営に都合のよい仕様に置き換えてしまった。

  • 不正RMT対策やバランス調整が面倒なのでユーザー間取引システムを実装せず、MMORPGではできて当たり前の経済活動ができなくなった

  • 「おしゃれなんてやりたい人にガチャをさせればいい」と雑に考えて、無償での衣装の入手手段を徹底的に排除した結果、MMORPGではできて当たり前のおしゃれを大多数ができなくなった

こうしてブルプロは、いにしえのMMORPGの影響は受けているものの、一般的なMMORPGのフォーマットからは外れた「何か」となった。

問題は、その「何か」をライブサービス型として売り出そうとしたこと
おそらくストーリーとコンテンツを定期的に追加するだけでライブサービス型が成り立つと考えたのだろう

結果は、経済活動もおしゃれもできずゲーム内でできることがバトルくらいだったので、大多数のプレイヤーはブルプロをプレイし続けることに価値を見い出せずにあっという間に離脱した。ストーリーとコンテンツを定期的に追加するだけではライブサービス型は成り立たなかった。

4.MMORPGに背を向け続けたブルプロ

ブルプロは、ライブサービス型として売り出す以上は従来のライブサービス型ゲームがいかに成り立っているのかをもっと研究するべきだった。
PvEアクションの魅力だけで年単位でプレイヤーを繋ぎ止めるのが相当むずかしいことは他のライブサービス型のアクションゲームを調べれば気付けたはず。

PvPメインにするつもりもなく、PtW(Pay to Win)を売りにしているソシャゲにするつもりもないのなら、PvEメインでPtWではないライブサービス型ゲームである国産MMORPGについてもっと深く考えるべきだった。
くくりとしてはPvEアクションゲームに含まれる国産MMORPGが、なぜあんな一見余計に見える様々な要素を含んだ面倒なゲームシステムとなっているのかを考えるべきだった。国産MMORPGは、並に面白い程度のPvEアクションゲームでもプレイヤーを繋ぎ止めてライブサービス型を成り立たせる方法を当に提示していたのだから。そこで経済活動とおしゃれも、プレイヤーとそのゲームの世界との関わりを深めてライブサービス型を成り立たせるために必要な要素だと気付くべきだった。

経済活動を可能にしたり誰もがおしゃれを可能にするのは、技術的に難しいとか工数的に厳しいとかそういったことはない。
単に不正RMT対策やバランス調整をする覚悟を決めてユーザー間取引システムを実装して、単に悪名高きガチャを受け入れてもらえるよう最大限の努力をすればよかっただけ(※3)。実際にそれができているPSO2NGSというゲームも身近にあったわけで、その気になれば普通に実現できたこと。

ブルプロは作りたいものの理想が高すぎて失敗したわけではなく、単にやればできることをやらずに失敗しただけ

5.ブルプロの最後

ブルプロは、最後の最後までバトル周りの改修で状況を打開しようと試みていた。

バトルだけではライブサービス型が成り立たないのがそもそもの問題であり、バトル改修とか後の話でまだそんなフェーズではないことに最後まで気付かなかったのか、それとも気付いていたが今更MMORPGの仲間入りはできないとの意地だったのか……。

そして2024年8月28日、遂に力尽きた。

あまりこういう言い方はしたくないが、ライブサービス型の採用や、MMORPGに関する知見のなさ、あと本文では触れていないけれどもガチャの無策ぶり(※3)、一周年時点での対応のズレっぷり(※4)など、ブルプロ上層部は昨今のゲーム事情を表面的にしか理解していないのでは?と感じずにはいられない場面があまりに多すぎた。

6.まとめ

ブルプロが失敗したのは、MMORPGではない「何か」でありながら安易にライブサービス型で売り出そうとしたため。

PvEバトルだけではプレイし続けることに価値を見出させることはできないので、MMORPGのように経済活動ができたりすべてのプレイヤーが基本料金でおしゃれができるようにするなどしてライブサービス型が成り立つようにしなければならなかったが、そのような対策を一切行わずにひたすらバトル周りの改修に終始していたため。

注釈

※1 「バトル」や「アクション」は特に何の表記もない場合はPvEのこと

※2 ユーザー間取引システム実装のメリット・デメリットについては以下を参照

※3 ブルプロの衣装ガチャの問題点に関しては以下を参照

※4 ブルプロ一周年の改修に関しては以下を参照


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