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“またな”

吸い込まれていくような感覚で

上を見上げながら歩く

3月になると

空にいる あいつのことを思い出す


何でなんだろうな

なんでお前が

行かなきゃいけなかったんだろうな


3日前にあの教室で

CHARMSのサワーボール食べて

“またな”って言ったのにな


試験が迫って

“ヤバい”なんて騒いで

結局お前だけ

なんでいつまでも同じ制服着てんだよ


いつまでも いまでも

お前だけは あの時のままで

一緒に自転車で帰った道も

変わってしまって

お前んちも

なくなったのに


お前がいなくなってから

訪ねた部屋は

いつまでもお前がいるときのままで

本当は止まっていない時間に

一生懸命鍵をかけた おばさんを見ると

ぼくも友達も

苦しすぎて 悲しすぎて

もう訪ねて行ってはいけないと

思ってしまった


もうぼくは あの時のぼくらが

大人だと思った年齢になったと思う

ここまで来るまでに

誠に勝手ながら

ぼくも そっちに行ってしまいたいって

考えが浮かんだことがある


でも お前が浮かんだ。

まさかそっちに行くなんて

思ってなくて

もっと生きる気でいたお前を


ありがとう 引きとめてくれて

ごめんな しっかり生きてなくて


3月になると

お前のことを思い出す

きっとずっと ぼくがそっちに行くまで


手のひらのシワのひとつに

きっとお前が居てくれると思って

今日もぼくは拳を握る

強く

もっと強く できるだけ強く


そっちに行くまでに

もっと色んなものを見て 感じて

お前にまた逢えたら 必ず伝えたいから


“またな”


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