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なんかいい邦画。
専ら映画は洋画派のわたしだが、邦画を観ないかと言われれば否。
だがその知識量というか、熱量みたいなものは、正直ハリウッドのアホ大作に比べると正直劣るところはあって、やはり詳しいことを話せる自信はない。
それでも洋画の刺激的な世界だけでは補えない"何か"が邦画にはあって、それは同じアジア映画でも、韓国、中国、台湾、香港、タイ、インド、などとも違う、日本映画特有の空気感があると思うのだ。
演技の好き嫌いとか、スケールの大小とか、そういうことを一切抜きにして、今日はわたしが思う「なんかいい邦画」をご紹介したいと思う。
相変わらず世間一般の評価とは、ある一定の乖離があるセレクトも多いと思うが、どうか厳しいご意見は控えめに。
未見の方はぜひチェックを。
共感してくれる方はスキや、わたし以上の熱いコメントをお待ちしています。
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①『サマータイムマシンブルース』(2005)
「笑える映画」として、もう有名な作品だろう。
本作の絶妙なスケールの小ささ。これでこそ邦画の素晴らしさ!と思えること間違いなし。
個人的には"夏映画"としても、ある種不動の地位を確立している映画だと思っていて、別にそれを目的として描いたわけではないんだろうけど、日本独特の夏のだるさと高揚感のバランスが最高の1本だと感じている。そろそろ『サマータイムマシンブルース』の季節ですな。もうね、これなんだよ、これ。「あー、つまんないー。」「やることはあるけど、何のやる気も起きやしないよー。」という気持ちになったときのこれ。
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②『THE 有頂天ホテル』(2006)
『サマータイムマシンブルース』とは対照的に、比較的大きめなスケールで描く邦画の良さって、こういう映画に詰まっているよなと思う。
三谷幸喜のキザな作風と、良い意味で日本映画らしくない群像劇スタイル。それなのに笑いのポイントだけは変にアメリカナイズされないでいてくれる完璧すぎる1本。抱腹絶倒という言葉の意味は、たぶんこの作品で教えられた。たのしくて慌ただしい年末感、あの感覚をコメディという袋に詰め込んで、誰にも解る形で具現化するのって、本当にすごい。
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③『アヒルと鴨のコインロッカー』(2007)
個人的に"なんかいい"の代表格だと思っている日本映画のひとつ。
本当に何が良いのかよく分からないんだけど、なんかいいんだよ。
作品ジャンルとしてはサスペンス。だけどサスペンスらしからぬ"ぬるい"温度感があまりにも心地良すぎる。いやその設定には無理があるだろ!と思う箇所もゼロではないが、映画ってそれがいいよねと思わせてくれる一作。選曲の良さは言わずもがな。
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④『百万円と苦虫女』(2008)
結構、割と、ちゃんと、人生観に影響を与えてくる映画。本作は心のちょっと深いところで、常に生き続けているような気がする。
2時間の中で、きっと自分自身のこととか、いつかの誰かのこととか、憧れに似た友人の姿とか、色んな人の姿を重ね合わせる人が多いんじゃないかなと思う。わたしもその思惑というか、感覚に身を委ねたくて、たまに観返しては「ああ、いい。」と呟いている。蒼井優が放つ眩しすぎない光って最高だよね。
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⑤『BECK』(2010)
漫画原作の映画化による失敗作?そんなことはないと思う。
そりゃ当時の"イケメン俳優"と言われる役者たちを集めるだけ集めて、音楽映画のタブーとも言われる"歌わない歌唱"をしたことにお怒りのファンは多いかもしれない。だが誰が何と言おうと、忽那汐里が可愛い…もとい、映画全体のテンション感がずっとカッコいいじゃないか。それだけで十分だろう。出逢い、別れ、約束、仲間、音楽・・・はいはい男は馬鹿ね、と言われても構わないから、わたしは本作を"なんかいい"映画だと言い続ける。あとやっぱり忽那汐里が可愛い(早口)
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⑥『超高速!参勤交代』(2014)
邦画、というからには、やっぱり時代劇を入れておかなきゃなーと思い、悩みに悩んで「やっぱりこれか」と思った1本。(いやこれなんかいってツッコミしましたね??)
"なんかいい"ではなく、"いい映画"として選ぶなら、もちろん『七人の侍』とか『座頭市』とか、『るろうに剣心』だってランクインさせるべきかもしれない。だが、"なんかいい映画"だとしたら、本作の右に出るものはいないだろう。それでいて、たぶんこれがいちばんリアルな時代劇なんじゃない?という想いを込めての1本。これが古来からの日本の良さなんだよ、きっと。
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⑦『セトウツミ』(2016)
個人的にはドラマ版『セトウツミ』のほうが好きなのだが、さすがは池松壮亮と菅田将暉のダブル主演といったところか、映画も負けず劣らずの空気感。
たぶんこればかりは、自分自身の高校時代のくだらなさを懐古して、何らか当時の可笑しさを重ね合わせての、圧倒的な身内バイアスがだだ漏れのセレクトだと自覚しているわけだが。多かれ少なかれ、誰しも一度は経験した、青春時代の謎の心地良さを覚えられるのではないだろうか。パーティーやプロムといったイケイケアメリカンな高校生活も素敵だが、わたしは本作のような高校生活も大好きだ。
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⑧『今夜、ロマンス劇場で』(2018)
演技は?ーう~ん・・・。
脚本は?ーう~ん・・・?
設定は?ーう~ん・・・!というのが嘘偽りない正直な感想なのだが、海外映画に被れた無理な"アート感"を感じさせないところが本当に大好きで、結局いつ観ても楽しい映画として、わたしの中では確立された1本。良くも悪くも、日本映画ってどこかウブなところがあって、どーんっと天井を突き抜けない慎ましさがあるんだと思う。それを嫌い、と一蹴する人も多いのだろうけど、その実家のような安心感は、たぶんこういう映画でしか補えないもの。極めすぎない映画って良いよねぇ。
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⑨『あのこは貴族』(2021)
前段の『今夜、ロマンス劇場で』とは真逆のことを言うが、突き抜けた日本映画の面白さってこういう作品に滲み出てくるよなと思う1本。本作に限っては原作小説と含めて好きになってしまったので、映画単体の評価だけではないのだけれど、"社会派"とか、"現代ドラマ"とか、そういう謎の物差しで測られた設定ではなく、ただただ"そのまま"を描いただけの作品って、こんなにも面白くて、奇怪で、エグいのか!と、妙な興奮を覚えたり。共感ではなく、共鳴したい映画。主演2人の演技も"なんかいい"のだよ。
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⑩『カラオケ行こ!』(2023)
文句なしの"なんかいい"映画。身分の違うバディもの、という設定なんかは、もう物語として出尽くしているし、導入だって、オチだって、笑いどころだって、泣かせどころだって、全部全部どこかで見たことがあるタイプのやつ。だけど堪らない。堪らなく愛おしくて、どんどん映画がクライマックスに向かっていくのが惜しいと思ってしまう。近年稀にみる"なんかいい"邦画の傑作、まずは事前知識なしでどうぞ。きっとその後2回3回と観たくなってしまう人は多いはず。そんでもって軽率に綾野剛の沼に落ちる。男だって関係ない、綾野剛演じる狂児、あれは惚れる。
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ひとまず10作品を挙げてみたわけだが、ここまで書いて、"なんか"という枕詞が大変失礼な気がしてしまった。
だがやっぱり上記に挙げたような作品は、"なんか"なのである。
それは、何が良いのか分からないけど、という意味ではなく、この良さが上手く言葉では表せないんだけど、の意味においての"なんか"だということを注釈しておきたい。
データとか、口コミとか、星の数とかもいいけれど、わたしはこの「なんか」を大切にしたい。なんかいい映画。なんかいい本。なんかいい絵。そういう感性を磨いていきたい。
そんなわけで、間もなく本島も梅雨入りし、日本ならではのストレスフルなジメジメシーズンが到来するだろう。なんか嫌だ…そんなイライラを吹き飛ばせるのもまた、日本ならではのなんかいい映画たちであると信じて、僭越ながらのご紹介であった。
ご参考程度に。