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シドニー交響楽団、2025年シーズン開幕
開幕、ってプロ野球みたいだけど、オーケストラもシーズンというのがあり、シドニー交響楽団の場合は2月頃からシーズン開始、となる。
2025年シーズンは、首席指揮者であるシモーン・ヤング指揮のマーラー第3交響曲で切って落とされた。
独墺系音楽を得意とするヤングさんが首席指揮者となってから、シーズンオープナーはマーラーというのが定番になっているようで、2022年以降、2番、1番、5番、そして今年の3番となっている。まだ先の話だが、来年もマーラーなのかなあ。そうだとすると、何番をやるのだろうか?8番?
今晩は、コンサート前に友達との飲み会に軽く参加していたので、そこからフェリーに乗ってオペラハウス近くの波止場まで行くことにした。海をわたってコンサート会場に向かう…なんてめちゃくちゃゴージャスじゃありません?
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でも、マーラーの3番って長いんだよなあ。なんでも、世の中で一番長い交響曲らしく、その長さ、約100分。
最近仕事が忙しかったし、コンサートの前に飲み会に参加なんかしちゃって大丈夫だろうか?途中で寝落ち…はしないだろうけど、トイレに行きたくなったらどうしよう?といった不安を抱えて座席に向かった。
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僕の定番席は、ステージ横のセクション。音響のバランスはおそらく良くないと思うけど、奏者や指揮者がよく見えるのが、もと楽器吹きとしてはとても楽しい。
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ステージいっぱいの楽員、特に打楽器が多いなあ…そして、女声合唱団は最初から出ずっぱりか…この人たちの出番は曲が始まってから1時間後くらいなので、ご苦労さまです…。
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演奏についての感想をあれこれ書くほど筆力がないので、ざっとまとめる。
ホルン8本による斉奏でこのシンフォニーは始まる。
第1楽章は特に長く、30分ほど。様々な要素を持ったフレーズが出てくる。暗示的なトランペットの叫び、宗教的なトロンボーンの長いソロ、可憐な木管や弦楽器によるフレーズ、そして夏っぽさがあふれる行進曲…。(まあ、マーラー自身が「夏が行進してくる」という表題を付けているので聞き手もそう感じるのかもしれないが)。
長い楽章も、最後は鮮烈な勢いの行進曲となり、圧倒的な勢いで終結する。
思わず出る拍手…むむ、僕は楽章途中の拍手はキライなんだが、ここシドニーではわりあい「当たり前」なので、もうあきらめて気にしないようにしている。
前の楽章で高ぶった気持ちを落ち着けるかのような、可憐な第2楽章が穏やかに演奏される。
そして、メルヘンチックな第3楽章。楽しげな曲調だけど、時々パロディというか、毒というかが現れる…このへんは、マーラーらしい。
そして、ステージ裏から漂うポストホルンの長いソロ。どこからともなく奏でられるメロディーのせいで、この時だけ異世界に連れて行かれるかのような気分になる。
最初の3楽章は、とにかく「自然の音」が溢れていて、聞いていて嬉しくなる。
4楽章からは雰囲気が少し変わり、もっと精神的な音楽になる。
いつの間にかステージに現れていたアルト独唱が、神秘的というか、夜の気配に満ちた趣で歌い始める。ちょっと宗教的な気持ちになる。
次の楽章はガラリと気持ちが変わり、児童合唱、女声合唱による楽しげな歌唱になるが、アルト独唱がそこに影を添える。次作の第4交響曲の影がちらつくなあ…。
そして、最後の第6楽章。さすがに、観衆も力尽きた人が増えてきたのか、少し客席の緊張感が無くなってきたのは残念だが、まあ仕方ないなあ…。
静かに静かに始まるこの楽章、波のうねりのように盛り上がり、静まり、また盛り上がり…を繰り返す。昔は、こんな壮大な(長い)交響曲の最終楽章がゆっくりなテンポなんて!と思ったが、中年オジサンになってからは、こう、しみじみと来ますなあ。
最後の最後は、ずっと長いクレッシェンドで突き上げていき、最後は決然としたティンパニの連打に支えられて圧倒的な感動の高まりをみせて終結する。いつまでも終わってほしくない!と思えるような気持ちになった。
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やれやれ、長かったけど…良かった~~~!という気持ちで拍手を送る。
シモーン・ヤングは特に変わった解釈をしたり、劇的なテンポを設定したり、ということはしない。ごく普通に演奏するし、指揮ぶりも大げさなものはない。ただ、まとめ上げる力、というのは凄いのだろうなあ、といち観衆としても感じる。シドニー交響楽団が、彼女のバトンの下ではいつもより2倍…は言いすぎかもしれないが、1.5倍位のまとまり、集中力をみせて演奏するような気がする。まあ首席指揮者なので、ツーカーの関係ができているのだろうけど。
今宵も、壮大かつ感動的なコンサートでした!