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映画「サユリ」を観て漫画原作を映画で再現する難しさを考えてみた

押切蓮介の同名人気ホラー漫画を「地獄少女」「不能犯」の白石晃士監督のメガホンで実写映画化。

念願の一戸建てに引っ越してきた神木家。夢のマイホームでの生活がスタートしたのもつかの間、どこからか聞こえる奇怪な笑い声とともに、家族が一人ずつ死んでいくという異常事態が発生。神木家を襲う恐怖の原因は、この家に棲みつく少女の霊「サユリ」だった。

https://eiga.com/movie/101479/

※以下めちゃくちゃネタバレを含みます。

私的に近年のホラー映画でいっっっちばん楽しかった映画です。
こんな人にオススメ。
・新しいホラー映画を観てみたい。
・怖いけど笑える体験をしてみたい
・ホラー映画を克服したい


日常のふとした瞬間に怖さを差し込んでくるジャパニーズホラーの特徴として漫画原作を実写化に落とし込むのはそのリアリティの担保ができるかが重要となってきます。今回は私なりにその伏線を探ってみました。


原作漫画をリアリティに変換する伏線


白石監督の映画は冒頭のジャンガジャンガの田中さんが出ているシーンで有名なモキュメンタリーホラー作品の「ノロイ」の頃から大好きで、何回も観ておりました。

今回のサユリも作り込みが細かく、何度も見ることでさらなる発見があります。
よく「映画には偶然がない」という表現がありますが、脚本にセリフを乗せた以上、作成者側の何かの意図は必ず存在します。
例えば、冒頭すぐに末っ子の俊くんが、窓から見える下水処理場を指差し
「あれはなに?」というシーンが有るのですが、
あのシーンを映すことによって後々その場所からサユリの白骨死体が出てくる重要な伏線に繋がっているのです。

 また、後半最大の盛り上がりでもある、おばあちゃんの覚醒シーンでも(確変タイム)ギリギリ現実感を出す為に、冒頭から「ボケる前は太極拳の師範だった」という説明や実際に孫を投げ飛ばすなどの暴挙を描くことですんなり入り込むが出来ました(ごめん、すんなりは嘘です)

 その他にも「おばあちゃんはヤクザを5人返り討ちにした」という発言の後、九条家を全員誘拐してくるシーンや則夫が「夜食の時間だ(倫理観)」とサユリの頭蓋骨をボリボリ食べるシーンの前に分厚いせんべいをボリボリ食べ健顎を披露するなど。
「漫画原作のそうはならんやろ」をうまく実写に落とすべく、事前の仕込みを細かく、描いて頂いているのでとてもすんなり見ることが出来ました。

太極拳と生死観に関して


この映画の重要な要素となっている太極拳。「命を濃くするんじゃ」というおばあちゃんの言葉からもある通り、この太極拳のマスターがサユリ討伐のポイントとなっています。
この太極拳の師範であるおばあちゃんだからこそ、はじめからサユリを視認でき、孫の中で唯一筋が良いと言われていた則夫だけが結果生き残ることが出来ました。
劇中でも説明がありましたが、殺された家族はそれぞれ不安や怖れに漬け込まれたことによりサユリに命を奪わています。お父さん、お祖父ちゃんは家族を養う責任から、お姉ちゃんはサユリを実際に目撃してしまった恐怖心から、お母さんは家族の悲惨な状況から、そして弟の俊くんはお父さんが亡くなった後から仕切りに「死ぬのが何故悪いのか」このように死に関して興味を持ってしまった為連れていかれてしまったのではないでしょうか。

お化けには下ネタが効く


また、作中でもありました。サユリに下ネタをぶつけるという最悪な除霊方法ですが、私はあらがち間違っていないとも感じました。
出典が2ちゃんねるというあまりにも薄いソースで恐縮ですが、妖怪退治などの方法などを事細かく描いているスレの分節で、「妖怪は汚いものと童貞や処女を好む、それは性(生きる・新しい命)が妖怪や悪霊から最も対局にあるからだ(意訳)」というものがあります。アメリカのホラー映画では、イチャイチャしているカップルが真っ先にゾンビに殺されますがあれはゾンビだからということでしょうか。それなら当然ですが、ゾンビはいわば人間の状態異常の一種ですから、霊魂や妖怪とは全く異なる性質を持っていることがわかりますね。

【名作スレ】妖怪退治の仕事してるけど、何か質問ある?

サユリで観る対処療法と原因療法


サユリの良さは何度も言うように後半の怒涛の展開と祈祷師を自らの手でぶちのめすことにより、「自分の手でちゃんと復讐をする」という展開に新しさにあると思います。

 日本のホラー映画は悪霊を絶対の不可侵という存在にしており、生者は敵わない印象にありますが、この映画では逆で死者は生者より強いという信念のもとサユリ討伐に向かっていきます。
祈祷師キャンセルをしたシーンから「あ、この映画違うな」と実感しました。
またこの映画は呪術廻戦の九十九がいうように、対処療法(悪霊を封印する、祓う)ではなく原因療法(悪霊を生まない、悪霊になった原因を取り除く)に着眼点を向けており、根本解決の為、サユリ自らに自身が悪例となった原因を排除させる(家族への復習をさせる)という。
確かに辺に封印するよかは、原因となった一族を滅した方が早いなと実感させられました。

「呪術廻戦」9巻/芥見下々/集英社


さいごに

古今東西あらゆるホラー映画あるあるを内包しているホラー映画「キャビン」でもジャパニーズホラーは最凶であると評されていますが、比較的低予算で作成できるジャパニーズホラーは今後も日本の映画界を支える重要な柱の一つになると思います。今後もその躍進を心待ちにしつつも「生きている人間が本気を出せばワンちゃん勝てる」といった気づきを与えてくれるサユリは日本のホラー映画史に名を残す名作だと思いました。



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