告白
彼女と初めて会ったライブから1ヶ月ちょっと経ったある日、応援する会のメンバーで飲み会があった。
彼女もその飲み会に参加する事を聞き「また会える!」と心の中で喜んでいた。
飲み会当日、俺は幹事だったのでもう1人の女性会員と共に早めに会場入りしていた。
開始時間になっても彼女は現れない。
時間になったので先に始める事にした。
迷子になったから遅れるという連絡があったので幹事の女性会員が近くの駅で待ち合わせをして一緒に連れて来るという事になった。
しばらく待っていると上手く合流出来たのでこれから向かいますと連絡が入った。
開始から30分くらい遅れて彼女は到着した。
しかし……彼女はこの日参加予定だった男性の車に一緒に乗って来たと言う。
「えっ……?」て思った。
なぜならその男性は他県在住で高速を飛ばして来ても3時間以上かかる距離に住んでいる。
わざわざ迎えに行ったのか?
どういう関係?
いろんな思いが頭の中を駆け巡ったが、まだこの時は彼女と付き合って無かったから余計な詮索もせず胸の辺りにモヤモヤした気持ちを残しつつ飲み会を楽しむ事に専念した。
俺はこの日、彼女にも他のメンバーと同様に俺の病気の事を伝えようと考えていた。
いつ伝えようか考えながら飲み会は進む。
彼女は俺から離れてる場所に座っていたので中々思うように話せる状態では無い。
そうこうしてる間に飲み会は終了となってしまった。
近くの駅に旦那が迎えに来ると聞いて俺はここしか無いと思った。
仲間に駅まで乗せてもらい2人で駅舎内に入る。
俺の住む場所はこの駅から歩いて10分くらい。
彼女はある女性会員から「なんか話が有るんだって」って聞いてたらしい。
2人で待合室らしき所へ座った。
時間も遅くほとんど人が居ない駅。
そして俺の告白が始まる。
俺の病気の事、それに対しての想い。
話し始めると同時くらいに彼女は泣きはじめた。
俺が話し終わるまでずっと下を向いて泣き続けていた。
そして暫しの沈黙。
彼女が「頑張って欲しい!ずっと生きて欲しい!」って言ってくれた。
俺も思わず涙ぐんでしまった。
そろそろ迎えが来るという事で階段を降りて駅舎内の広場へ。
別れ際のハグ。
誰も居ない広い空間に2人だけ。
結構と長いハグ。
彼女はなかなか抱きしめた手を緩めようとはしない。
俺もそれに応えようと同じように手を緩めない。
お互いの想いを感じ取るかのように長い時間抱きしめていた。
でもこのままじゃキリがないので「もう迎えに来てるかも?」と身体を離す。
彼女の名残り惜しそうな顔がとても愛おしく思えた。
そしてお互い違う出口に向かって歩きだす。
俺の中で友達とは違う感情が育ち始めていた。
必ずまた会うぞと心に決め家路についた。
後々知った事なのだが迎えに来たのは旦那ではなくて飲み会会場に一緒に来た男性会員だった。
なんじゃそりゃ!