初対面

余命宣告から4ヶ月くらいして応援しているSSWのライブが地元であって参加する事になっていた。

余命半年のはずなのに驚くほど普通に過ごせてる。


「病は気から」と言う言葉があるがまさにその通りなのだと痛感する。


自分が楽しい事をし幸せな気分になれば身体もそれについて来る。

医者の見立てなどあてにならないものだとつくづく思う。

ライブ当日、仲間達と待ち合わせ楽しい時間を共に過ごした。

ライブ終了後ホールで仲間達と話しながら余韻に浸っていた。

たまたま俺が1人になった時に女性が駆け寄ってきた。

それが彼女だった。

どうやら俺が1人になるのを待っていたらしい。

「○○です」と恥ずかしそうに言った。

超人見知りの彼女からしたら実に勇気ある行動だったに違い無い。

挨拶を交わしたがそんなに話す事も無かったので初対面の記念として俺が手作りした応援うちわをプレゼントした。

彼女は凄く喜んでくれた。

すると彼女はいきなり「ハグしてもいいですか?」と言ってきた。

初対面でいきなりハグ?

とは思ったけど快くOKした。

彼女のハグはギュッて抱きしめるタイプのもの。

俺もギュッて抱きしめ返した。

多分、傍から見れば抱擁にしか見えない。

時間にして10秒くらいだったろう。

ハグにしては少し長いのだけど嫌な感じはしなかった。

むしろ不思議と安心感を覚えもっと抱きしめていたいと思った。

大勢の人が居る中で2人の周りだけ時間が止まっているような感覚にすらなった。

身体を離し彼女は「ありがとうございます」と笑顔で言って足早にその場から去って行ってしまった。

不思議な感覚を残しながら「また会いたいな」と心の中で思っていた。

これも後から彼女に聞いた話なのだけど、この時旦那がすぐ近くにいたらしい。

「何やってんの?」って旦那に驚かれたって言ってた。

旦那は俺の事どう思ったのかな?

うーん、気になる……。