見出し画像

10秒⑨


⑨俺の番

「莉輝斗!!!!!」
聞こえたのは車のクラクションの音だけ。
見えたのは莉輝斗の瞳だけ。

ここでやんなきゃ、いつやる?
また、目の前で大切な人を失うのか?
もう、自分の手の平から大切なものを失いたくない。

だったら

やれ

『時を止めて』

世界が止まった。

さぁ、タイムリミットは10秒だ。俺のすべきことはもう分かってるだろ。

俺は莉輝斗の元へ駆け寄り抱えた。
壊してしまわないように、丁寧に、丁寧に…
莉輝斗を車に引かれないギリギリのところに寝かせた。

そして車が動き出し、俺の視界は真っ暗になった。

これでいい。

この力は、この世界にあるべきものじゃない。

これで、終わらせる。

じゃあな…

元気でいろよ…

あんまり早くこっちに来たら…

怒るからな…

どうか、この大切な人が…

いつまでも幸せで…

いられますように…      完

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?