怒りを見つけて
どうも私はとても大きな勘違いをしていたようで、まさか三十台も後半になってこんなことに気づくとは思わなかった。それはこう、なんというか、私は未だかつて一度も怒ったことがなかった、ということ。より正確に言えば、私が「怒り」だと認識していた感情は「わかって欲しい」だった。本当にいろんなことがあって、とことんまで多くの人々に、何より自分自身に失望して、やっと気づいたけれど、怒りというのは「わかって欲しい」というような甘やかでとろりとしたものではなかった。それはとても冷たく、鋭角で、静かで、重たい。未だかつて感じたことのないもので、それが自分の中に現れたときはとても驚いた。まだ未発見の感情、それも「怒り」なんてものがあるとは流石に想像しなかった。
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