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トラックとおばけ
なにもかもがめちゃくちゃになっていく。
自分が生きてここにいる、その理由がひとつもわからない。どう考えたってしぬだろこれ、目の前に広がる光景が一から十まで全部狂っている。これはもう二択になる。世界が狂っているか、私が狂っているか。こういうのは大体後者が正しいと考えておけば間違いない、のだけれども。検算や推敲を繰り返して、そんなはずはない、ありえない。しかしながら、どう考えてみても自分が正しい、そのように思える。わからない、迂闊にエビリファイを増やすのも怖い。統合失調症は病識がない特徴はずなのだけれど、こういうパターンもあっても…。躁転もあり得るし…
よし、他人に検証してもらおう!
そんなわけで、私はうら若き金融マンを自宅に呼んだ。日当5万円。8時間。ええと、私は正気ですかね? かれは若く、才能と負けん気に溢れているが、一方で場数の少なさや経験不足も感じている。チャーミングな傲慢さ、若いころの私が持っていなかったうらやましい才能。数年前よりファッションは随分落ち着いていた。ザックリしたチノパンにTシャツ、そのうえに「ちょっとつっかけてきた」ジャケット。わかる、こう、なんだ。「ジャケットをしっかり着てきました」ではなく「そこにあったのを適当に」感が好きになる時期。私は「オレンジのフード付きパーカーの上にジャケットはやりすぎ、トークショーじゃなくて講演だぞ」とたしなめられたことがある。それに比べると、彼はとても上手にスタイルを作っている。なんだろう、たとえば日本一一番感じのいいエアコン修理屋さん、そういう感じ。お金の仕事(変な言葉だ)をしている二十代には珍しいセンス。自分の顔とスタイルが良すぎて損をしていることに、気づいたんだな。そうだね、結構それって損しちゃうよね…。世の中にはいろんな税があるんだ
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