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布団、熱、抗議

 ややキツめの鬱に見舞われて心身がつらい状況にあるのだが、昔よりは症状が軽いこともあり、起きられない・動けないということもなくなった。とは言え、稼働できる時間が狭まったことには変わりないが。
 太陽の熱線が入る室内で布団の上でのたうち回る。鬱に入った時期の通過儀礼のような行動。とにかく起きたくなくて、なんとか入眠しようと試みるも、熱線により上がった室温は睡眠を許すはずもなく。布団と背中との間にこもる熱は身体に広がって汗を生成させる。まるで入眠することを許さない自然現象かの如く、睡眠者を責め立てる。
 入眠妨害に抗いスマートフォンを眺めていると、「辺野古 抗議 日当」という文字列が目に入ってくる。文字列を掲げているアイコンをタップして内容を確認してみると、マンガ『島耕作』での一コマが辺野古基地抗議者への感情を逆なでしていると話題になっているものであった。
 部屋の熱が少し上がったような気がするが、日が高くなるにつれ気温が高くなることは自明の理。とある言葉の羅列を目にしたことによって、自身の体温が高くなったことが理由だろう。「辺野古基地反対の抗議者たちには日当が支払われている」。しばらく目にしていなかった言葉故に、過去の出来事やインターネットでの出来事が脳内でフラッシュバックする。なぜ今になってこのデマを見ることになるのか。
 「抗議者たちに日当うんぬん」というデマは僕が大学生の時代、もっと言えば高校生の時代から聞いてきたデマだ。とうの昔にデマであると証明されているし、もし真実であれば産経新聞あたりが大々的に報道して立派な社会問題あるいは国際問題へと発展していると思うのだが、未だにこのデマは力を持って流布されている。デマと証明されていてもなお力を持つ理由とはなにか。流布している側の人間になにか不都合なことがあるのか。それとも、ただ単にデマと証明している情報源へとたどり着くことができないのか。
 これは僕自身の体感でしかないのだが、日当のデマを信じる人は中高年層が多いと思う。具体的な年齢で言えば60代あたりの人だろうか。その年代の人達は、青春時代をアメリカ統治下の中で過ごし、アメリカ文化と共に生きてきた人たちだ。なのでアメリカからの影響が大きがためにアメリカを庇うようなデマを信じるのだろうと考えるのは早計だが、今から60年前といえば新左翼の運動が激しかった時代。その時代経験もあるせいだろうか。抗議うんぬんと語った後には、「あんな活動に参加したら公安に目をつけられるぞ」も続いて聞くことが多かった。大概のことは話半分で聞き流していたが、今になって思うと、抗議活動≒新左翼の激しい活動・思想といった具合の連想をして日当のデマを信じているのはないかと思う。しかしながら、これは僕の体感でしかないので信憑性はないに等しい。
 最近では辺野古の抗議運動で死者が出るという痛ましい事故が発生した。抗議者は重症で警備員は死亡するという悲しい事故だ。その事故に関しても、付近の防犯カメラから入手した映像が辺野古を沖縄を揺らしている。なんとかして両者落とし所のある解決がなされれば良いのだが、状況を鑑みても難しい結末ではないかと思う。
 そんな事を考えながら布団の上でのたうち回る。熱は一向に引く気配はない。


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