あの頃の感情は戻らない
心から夢中になれるものをもう失くした。
小学生の頃はカードゲームにハマっていた。親にお願いしてカードを買ってもらえることになった私は、ノートに「あしたカードをかってもらう」と書き、忘れないようにそれを頭もとに置いて眠った。
明日が楽しみでなかなか眠れない。何時に起きて、何時に家を出て、あのお店に行って、カードを買ってもらう。頭の中で繰り返し考えた。
小学校の授業中は、いつも友達と遊ぶことばかり考えていた。学校が終わるとすぐに帰宅し、ランドセルを置いて遊びに行く。友達の家で対戦ゲームをしたり、少ないお小遣いで駄菓子を買いに行ったり、公園で遊んだりしていた。
休みの日は目覚ましをセットし、朝から遊ぶことも多かった。目覚ましが鳴ると同時に飛び起きて出かける準備をする。マンションのエレベーターを待つ時間すらも惜しくて階段を駆け下りて駐輪場に向かう。
自転車を漕ぐ足は軽く、楽しむことに全力だった。
目覚ましは楽しいことが始まる合図だったんだ。いつから憂鬱な朝を知らせるものになってしまったんだろう。
幼少期は何事も深く考えずに生きていた。将来の不安も無く、好きなことに夢中だった。
私は今まで生きてきて、たくさん経験をして、勉強もしてきた。そして頭が悪くなった。
小学生でもできることなのに、楽しむという簡単なこともできなくなった。頭が悪くなったんだ。できなくなっちゃった。
好きなことがわからない。夢中になれるものもない。
何かを始めても、それは単なる現実への抵抗。停滞感を払拭したいがための言い訳。何かをやっている状況を作りたいだけ。好きでもないし夢中にもなれない。
心が固くなっている。
好きだったものを見ても何も感じない。
自分に新たなきっかけを与えても受け付けない。
冷めた視線を世界に向ける。
動かない心が死んでしまいそう。