デ・キリコ展
今日から始まった「デ・キリコ展」を見に行きました。先月まで東京都美術館で開催されていましたが、関西では神戸市立博物館での開催です。楽しみすぎて、初日早々に見に行きました。
ジョルジョ・デ・キリコ(1888-1978)はギリシア生まれの画家で、1910年代に制作した「形而上絵画」で当時の芸術家たちに衝撃を与えました。形而上絵画の後は、伝統的な技法による絵画にも興味を示し古典絵画へ回帰したり、以前描いた形而上絵画のモチーフを用いた作品を描いたりなど、精力的な活動を続けた人です。
最初のコーナーは自画像や肖像画ばかりが並んでいて、自画像は概ね上の画像のような感じで「これ、いつの時代の公園?この格好は何?コスプレ?」みたいなものばかりでした。実際にこういう格好をしたというよりは、伝統絵画を研究した結果の描写という感じかもしれません。いわゆる歴史画の中に自分を置いてみた、的な。表情などを見ると、自己愛が少し強めのような気もします。
デ・キリコは1910年代に歪んだ遠近法や脈絡のないモティーフの配置、幻想的な雰囲気によって日常の奥に潜む非日常や神秘、謎を表した革新的な絵画を描き始め、後にそれらを形而上絵画と名付けました(ニーチェの哲学に影響を受けたからだそうです)。
上の画像の手前にあるのがアリアドネの像で、彼の絵画に繰り返し現れる塔やアーチ型の窓のある建物などが描かれています。
そして、デ・キリコの重要なモチーフであるマヌカンが出てきます。表情が分からず、腕のないマヌカンは不安定な脚のイーゼルを前に考え事をしているようで、デ・キリコ自身と重ねられているそうです。イーゼルの後ろに何かの影が描かれているのも、彼の形而上絵画の特徴です。また、マヌカンが描いているのはアーチ状の窓のある建物で、これも繰り返し描かれるモチーフの一つですね。
マヌカンが2人登場する絵は多くて、これもそうなんですが、年の3歳離れた弟と自分を象徴しているとも言われているそうです。弟も芸術家で、若い頃にデ・キリコが芸術を教えていたということで、彼の最大の理解者でもあったそうです。
これ、なんだかめっちゃおかしくて絵ハガキも買ってしまいました。オデュッセウスとはギリシャ神話の英雄で、長い帰還の旅の話を狭い部屋の中、しかも舟は敷物のような水面に浮かんでいる絵に描いています。人間の行動範囲なんて所詮こんなもんだという皮肉でしょうか。
絵画だけではなくジャン・コクトーの「神話」の挿絵の版画や、彫刻の数々、舞台芸術などの展示もあって彼の仕事の幅広さに驚きました。
「わけのわからない人」「わけのわからない絵」と思っていましたが、少しだけ彼の作品の見方が分かってきたように思います。
「デ・キリコ展」のあとはコレクションルームへ行き、いつものように銅鐸を楽しみ、ザビエルさんを見て(9月から11月だけはザビエルさんのレプリカではない本物が展示されています!見に行くチャンスですよ)、そしてコレクション展を見ました。
「南蛮屏風とその時代」ということで、重要文化財に指定されている狩野内膳の「南蛮屏風」を中心とした作品が展示されています。重要文化財 狩野内膳筆「南蛮屏風」(左隻)
上の画像の中央下の方、輿に乗せられて横になっている人が秀吉ではないかとも言われているそうです。
前回の特別展の時にはまだあったカフェが閉店して、休憩コーナーになっていました。カフェの内装のままなので、割とゆったりと座って休憩することができます。また、カフェがミュージアムショップも営業していたそうですが、ショップだけは残り過去の図録やポストカードなどのミュージアムグッズを販売していました。休憩スペースには自販機などもなく、持参した飲み物を飲むくらいしかできないので自販機を置いてほしいかなー。
特別展「デ・キリコ展」は12月8日まで開催しています。おすすめです。