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オモロイ虐待防止委員会

少し前の話になるが先日、スウィング初の「虐待防止委員会」(正式には「虐待防止・身体拘束等適正化検討委員会」)を開催した。
なかなか、相当に仰々しい名前の委員会である。

これまでも最低毎年1回「虐待防止研修」は実施してきたのだが、国の要請(あるいは命令)によって、①虐待防止についての指針を定め、②虐待防止委員会を定期的に開催することが新たに義務化されたのだ。

3月下旬に取り組んだ①の指針作成は死んだ。
厚労省の示すひな形が実にお粗末で、言葉が難解というか日本語としてムチャクチャ。「こういうのはそれっぽくあればいいのだ」という表立ってはいけない風味がバレバレに出まくっている。

気は進まなくともやるからにはスウィングという場に合ったものをつくりたいので、悶絶しながら夜通しぶっ続けで作業をし、スウィングの現実に即した指針が完成したのは朝の4時頃だったと思う。法・制度による事業者虐待の恐れあり。

さて、悶絶作成した指針に基づいてさっそく開催した虐待防止委員会、これが予想外におもしろかった。

僕は進行役として参加し、虐待防止委員(大げさ!)の沼田君、あちゃみちゃん、Qちゃんと探り探り話を進めたのだが、あれは虐待なんじゃないか? あいつは虐待野郎だ! といった自警団的犯人捜しではなく、誰かがしんどさやストレスを感じている環境や他者との関係性を考え、スウィングをもっと過ごしやすい場所にしようという思いがそれぞれからビシバシ感じられたのだ。

これまでスウィングは長い時間をかけて、「開く」いう文化を培ってきた。

スウィング自体を社会に対して開くことも大事だけれど、個人個人が自分自身を他者に対して開くこと、それも<強さ>ではなく短所や苦手や辛いと感じること、つまり<弱さ>を開くことが何より大切なんだと。

また虐待防止委員に<利用者>であるあちゃみちゃんやQちゃんが入っているように、「虐待防止研修」もスタッフだけではなく、利用者もその受講対象としてきた(全員じゃないけど)。

虐待とまではいかずとも、他者に対して良からぬ振る舞いをしてしまうことは誰にだって起こり得るからだ。ごく当たり前に。障害があろうとなかろうと。

またパワーハラスメントについても、株式会社NPOの就業規則においてはこのように規定している。

パワーハラスメントとは、上司から部下に対する、もしくは部下から上司に対す る、または同僚の間での、優越的な関係を背景とした言動であって、業務上の必 要かつ相当な範囲を超えたものにより、就業環境を害することをいう。なお、客 観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導につい ては、職場におけるパワーハラスメントには該当しない。

さすがに就業規則はスタッフのみが対象になるが、<他者に対する良からぬ振る舞い>の流れが、決して上から下への一方向ではないことをここでも明確に示している。

こうしたスウィングの文化の上に立つ虐待防止委員会だからこそ、あちゃみちゃんもQちゃんも「自分もしてると思うんだけど」「自分も人のこと言えないんだけど」といった言葉を当たり前のように生き生きとした表情で前置きし、「こういう状況は良くない、変えた方がいい」と自分事としての意見を連発しまくっていたのだと思う。

沼田君に至っては「僕のあちゃみさんへの接し方がヤバいと思います」と本人を前にしてのまさかの激白。そして「キツくないすか?」とその場で直球で尋ねていた。

確かあちゃみちゃんは「こっちはそうは感じてないです」と答えてたと思うけど、この展開というか自己開示力には驚いて笑ってしまった。

議論が充実しすぎて「また来週、無理なら来月やりたい!」と皆興奮していたが、さすがにそのペースでやることはないにしても、今後も悶絶指針に定めた通り、定期的に委員会は続いてゆく。

やはりアップデートの前に必要なのはダウンロードだ。

自分自身の<弱さ>を知り、認め、受け入れること。できればチャーミングポイントとして抱き締めちゃうこと。

そうしてはじめて<弱さ>を他者に対しても開くことができ、その安心感があれば「虐待」なんていう怖い言葉だって、平気で自分事にすることができるのだと思う。

ええことばかりじゃないし、嫌なことも面倒なことも満載なのが相変わらずの日常だ。そしてもちろん露骨な暴力的行為やパワハラ・セクハラ的行為をにこやかに看過することはできない。

それでも手前味噌ながら、オモロイ虐待防止委員会を開催できるスウィングは、人間が人間丸出しで生きることができる、なかなか、そこそこに素敵な場所である。

薄っぺらい正義正論が横行しまくる、この世界にあって。

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