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特許はゲームの自由を制限する?パルワールド vs 任天堂 を見て思ったこと

2024年9月19日、衝撃的なニュースが話題となりました。

リリース当初よりいろいろな意味で話題となったパルワールドですが、任天堂が株式会社ポケモンと共同で特許権の侵害として開発元のポケットペアに対して訴訟をおこしました。

任天堂といえば、誰もが知る日本におけるゲーム業界のトップランナーです。それはすなわち、保有する特許も格段に多いことを意味します。

そんな会社が特許権の侵害を訴えるのはゲーム業界が萎縮し衰退する!などという意見がありますが本当でしょうか?

インディーゲームとは何か?

かつては、少人数で開発される小規模なゲームを指す言葉でしたが、今の時代、その定義は曖昧になってきています。SNSを通じて瞬く間に広がる口コミや、デジタル配信プラットフォームの進化により、インディーゲームがAAAタイトルを超える成功を収めることも珍しくありません。

直近で記憶に新しいのは天穂のサクナヒメでしょう。堂々100万本の大ヒットです。アニメ化までされ、勢いはまだまだ止まりません。

こうした中で、インディーゲームのクリエイティブな自由さや独自の発想は評価される一方、特許という視点から見ると、必ずしも自由ではないという現実があります。

インディーゲーム会社と特許の関係

ゲーム業界では、特許の存在がゲーム開発の影響を与えてきました。特に任天堂をはじめとした大手のAAAメーカーは、自社の特許を確保することに余念がありません。これらの企業は、自社開発技術の保護や独占を目的に、特許の買取やクロスライセンスといった形でその技術を管理しています。この仕組みは、他社が同じ技術を使用する際、ライセンス料を払うか、特許技術を提供し合うという形を取ることになります。

しかし、インディーゲーム会社のような小規模な開発スタジオは、このような大規模な特許戦略を実行する余力がないことがほとんどです。彼らは多額の資金を特許取得やライセンス交渉に費やす余裕がなく、結果として、多くの場合、特許に関しては黙認されているというのが現状です。

インディーゲームの躍進と特許の問題

ここ数年、インディーゲームの成長は目覚ましいものがあります。昔はAAAゲームが主流でしたが、今ではインディータイトルが口コミやSNSを通じて爆発的にヒットすることも珍しくありません。そのため、ユーザー視点では、インディーズとAAAの差は徐々に薄れているようにも見えます。むしろ、独自のアイデアや自由な発想で開発されたインディーゲームが、AAAタイトルを凌駕するケースも出てきました。

黙認の文化は変わるべきか?

伝統的に、ゲーム業界では特許に関して黙認が行われることがよくあったと聞きます。特にインディーゲーム会社が行っている小規模なプロジェクトに対しては、AAA企業も目をつぶることが多かったのでしょう。技術的に同じ発想が重なることはゲーム業界ではしばしば見られるため、ある種の暗黙の了解のようなものが存在していたのかもしれません。

しかし、現代においてはその状況も変わりつつあります。インディーゲームがAAAゲームと同等、あるいはそれ以上に成功を収めるようになった今、単なる「黙認」の枠を超えて、適切な法的対策を考える時期に来ているのかもしれません。特許を無視してやりたい放題に開発を進めることが許される状況ではなく、今後はインディーゲーム開発者自身も特許やライセンスに対する理解を深め、適切な形で開発を進めることが求められるのではないでしょうか。

特許は決して悪ではない!

インディーゲームが世界的な成功を収める時代において、特許問題は無視できないテーマです。特許の重要性を理解しつつ、創造性と自由さを保ちながら、新しい時代に適したゲーム開発のあり方を模索していく必要があります。

ゲームファンの中にはどうやら特許を価値を独占する悪として認識している人も多いようです。今一度考え直す良い機会なのかもしれませんね。

追記(2024/09/19 18:43)

株式会社ポケットペア、および同代表の溝部拓郎氏より声明がありました。

個人的に興味深いと感じたのは以下の部分です。

今回の訴訟により、ゲーム開発以外の問題に多くの時間を割かざるを得ない可能性がある状況は非常に残念ですが、ファンの皆様のため、そしてインディーゲーム開発者が自由な発想を妨げられ萎縮することがないよう、最善を尽くしてまいります。

POCKETPAIR : https://www.pocketpair.jp/news/news16

嘘偽りのない本音とはまさにこのことでしょうが、インディーゲーム開発者の代表面をしてこれをいうのは他の真っ当な開発者からしてもいい迷惑なのではないでしょうか。個人的には、特許周りの審査など彼らが言う問題もまたゲーム開発の一部かと思います。

聞かれたらダメというしかないので、お互い知らぬ存ぜぬで済ませてきたのがゲーム業界だと思います。これはまた話が大きくなりそうですね…。

最後まで読んでいただきありがとうございます!