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傷とダイヤモンド

ぼくは砂漠の街の神殿で、大いなるものを自称する者と話をしに来ている。

「人を傷つけてまで戦いたいか。人を傷つけてまで勝ちたいのか」

「勝負とはそういうものだ、誰かしらが泣き、誰かしらが傷つく、賞状やメダルやトロフィーや栄誉の裏に、必ず誰かの血や涙が混じっているものだ」

「そんなぼんやりした問題ではないんだ、今ここで、身近な人が、その戦いのせいで泣いたり傷ついたりしてんだよ。勝ち負けの話ではない、これは個人の尊厳の問題なんだ! そうやって大きくしてぼやかすからわからなくなる。目の前で流れた血を、目の前でぐしゃぐしゃにされた心を、そういう言葉が、戦いというものの存在を正当化するために軽々しく使われるんだ」

「戦いは生存のためのものだ。より強い遺伝子が残るために、生きて食べる者のすべての遺伝子にプログラムされた機能だ」

「じゃあなんで社会なんてあるんだ。協力しあって生きていった方がメリットがあると遺伝子が理解したからだろう、どうして仲良くできないんだよ」

「弱いものは去り、強いものが残って増えていく、その上での協力関係だ。弱いものの中でも別の強さで生き残るすべを見出すものもいる。知恵や可愛らしさや病だってそうだ。なんだって武器になる。弱いものだってやり方次第で強くなれるのが社会だ。多様な戦い方の中で、自分が生き残れないと判断したらその場を去る、それでいいではないか、それこそがいちばん進化した人類の形だ」

「じゃあ一方的に投げつけられた爆弾みたいな悪意に傷つけられた心はその場に存在することを諦めなければならないのか」

「……」

「自分の武器を使える土壌がそこにしかなくても、嫌な思いをした側が去らなければいけないのか」

「それが当人にとって一番良い形だと思うのならな。留まるか去るかは自分で選ぶことができるのだから」

「留まれば苦しみ続ける、縛られてその場から去ることもできない、それでもお前は、傷ついた側に選択肢があると言い続けられるのか」

「……きみはいったい、誰の味方をしたいんだ?」

「お前こそ」

「……」

「罪を犯した国の文化も心から愛せるというのか」

「誰にでも罪はあるものだ」

「……」

「きみは何がしたいんだ?きみは戦わなくても生きていけるではないか。戦わなくても生きていけるのに自分の意思であえて戦いの場に足を踏み入れている。戦場に入って銃を持ったらきみの手にはもう他人の血がついてるんだ。何が平和だ。何が平等だ。何が傷ついた人だ。きみは今まで何も傷つけず、何者の血も流さずに生きながらえたとでもいうのか!被害者の肩をもつような物言いをして聖人気取りか?きみはいったいなんの話をしてるんだ?きみの正義感はあらゆる視点に飛び火しているようだが、熱く語っているようでいてきみは誰のことも見ていない。傷つけることも傷つくことも、誰よりも恐れて避けているのはきみではないか!誰に対してもいい顔をして卑屈にヘラヘラ笑って引っ込んで謙遜しているふりをして!」

「……」

「もう始まっているんだ」

「……しかし……ぼくは……」

「武器をとれ」

「でも……」

「どちらかの側につけ、とは言わない。ひとりで戦え。覚悟を決めろ。

そして生き残れ。」

KOTOBA Slam Japan 2024全国大会
ひにち
2024.12.14(土)
ばしょ
@平和島大森スポーツセンター小ホール
じかん
OP13:00 ST14:00
おかね
前売¥4500
チケット買うところ
https://kotobaslamjapan.stores.jp/items/66f19090e47f10131459c98e
くわしいこと
https://www.kotobaslamjapan.com/ksj2024全国大会/

覚悟を決めろ。
私はここで優勝する。

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