全編ホルガで故郷を撮影した写真集「永遠の夏休み」出版からもうすぐ10年 その2 巻頭詩について
2010年に自費出版した写真集「永遠の夏休み」の巻頭には、一編のリード文のような詩を添えています。
そして、それ以降には一切言葉は出てこなくて、最後のページまで写真だけが続いていきます。
この僕が34歳の時に出した写真集の構成、実は高校3年生の美術の授業で自由制作(卒業制作)で初めてまとめた私家版の写真集の構成と全く同じであることについ先日気づきました。
昔から指向性がはっきりしていて芯が通っている、、、というより、はっきり言ってその成長のなさに思わず笑ってしまいますが、言葉の羅列によってその後に出てくるイメージ(写真)の羅列を見る人に対して感じることの意識づけをしてしまおうという意図があったのではないかと思います。
高校生の時の美術の卒業制作の写真集についてはまた別の機会に触れたいと思いますのでおいておいて、永遠の夏休みの巻頭詩をここに。
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1975年
僕は 三重県北牟婁郡紀伊長島町(現紀北町紀伊長島具)三浦という
山と海に囲まれた小さな集落に うまれた。
子どもの頃 野山を駆けずり回り 海や川に飛び込んでは 毎日を過ごしていた。
その小さな集落は 僕の世界 そのものだった。
やがて自我が生まれ 外の世界を知ると その小さな世界は窮屈になった。
高校を卒業し 田舎を飛び出した僕は
排ガスまみれの無機質な人ゴミとコンクリートジャングルで 念願の都会暮らしを始めた。
アルバイトをし 職を替え 10年程の歳月が経過した。
その頃 手にしたカメラはキングオブトイカメラのホルガ。
以来 夏になるとホルガで郷里を撮る。
僕の田舎は 夏しかする事がなかった。
夏になれば何かが変わる。
そう信じていた。
その期待は お盆を過ぎ ヒグラシの声が聴こえる頃に揺らぎ
未明の東の空にオリオン座を見つけて
砕け散る。
それでもまた 少年は 甘く切ない次の夏を待ち望む。
夏休みは 永遠に終わらない。
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この青臭さ、たまりません。
34歳にもなってこれを書けた自分が凄いなというか、さすがは青春好きを自認するだけのことはあるなと。笑
実は大学の卒業制作で制作した約10分の16mmフィルム作品「あばばいにゃぁ」も、基本的には内容は同じだと思います。
田舎の少年の夏のストーリー。
結局はずっとおんなじところを追いかけているんだと思います。
ちなみに僕は高校生の頃写真部には入っていましたがヒラ部員で、文芸部と物理天文部ではどちらも部長をしていました。
力の入れようとしては、当時は写真よりも夜空を見上げることと詩を書くことの方が重きを置いていたんですよね。
それにしても当時、冬の星座の代表格であるオリオン座が未明に東の空に登ってくるあの夏が終わってしまう喪失感は今も自分の中では「青春」という言葉の代表格です。
ちょうど夏の終わりの、明け方の少し半袖では寒くなってくるようなあの感じとも相まって、何かあるんじゃないかと期待した夏に今年も何も「起こらなかった」という淡々と進んでいく日常感を受け入れる、受け入れざるを得ない、けれどもそれでもまだ何か期待している、そんな煮え切らない日々の切なさ。
そんな切なさを抱えた少年が、年月を重ねたのち一度離れた故郷を追憶のまなざしで見つめ直したのが写真集「永遠の夏休み」です。
機会があれば是非どこかで手に取って見てください。
ちなみに、写真集「永遠の夏休み」は今では三重県紀北町にある道の駅紀伊長島まんぼうさんと三重県尾鷲市九鬼町にある本屋さんトンガ坂文庫さんでしか買えません(もしかしたらまだ大阪梅田茶屋町のMARUZEN&ジュンク堂書店 梅田店さんにも残っているかも)が、ステキ工房のホームページから連絡いただければ1200円プラス税で送料込みでお届けさせていただきます。
仕様はA4サイズ本編40ページの中綴じ製本で、映画のパンフレットのような感じでございます。