孤独と幸福の王子
大都会の真ん中にそびえ立つタワーマンションの最上階に、若くして成功を収めた実業家のカメが住んでいた。彼の窓からは、煌めく無数の光が見えた。その光の海を見下ろしながら、彼は自分の心の中の暗闇を感じていた。「こんなに高く上がれば、孤独も少しはましなものになると思ったのに……」と彼は自嘲気味につぶやいた。
そんなある日、マンションの屋上にアーティストのウサギが現れた。彼女は小さな町から来た野心的な存在で、大都会での成功を夢見ていた。「この街は大きすぎて、私みたいな小さな存在は簡単に飲み込まれてしまうわね」とウサギは笑いながら言った。その笑顔は、夢を追う純粋さに溢れていた。カメは彼女のそんな姿に惹かれ、二人はすぐに親しくなった。
ウサギはカメの孤独を見抜き、彼に一冊の本を勧めた。「この本を読んでみて。世界は思っているよりもずっと広くて、深いのよ」と彼女は言った。部屋に戻ったカメは、彼女が図書館で借りてきたその本の文字をゆっくりと辿った。そして読み終えた瞬間、彼の心の中で何かが動いた。
カメは本の表紙を指でなぞりながら、「幸福の王子か」と、無数の光を見下ろしながら、独り呟いた。
つづく