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時を超えた幻想の明かり

青く澄んだ秋空の下、ウサギとカメは緑を揺らす風を全身で感じながら歩いていた。すると、まるで時を超えて現れたかのような、気品あふれる邸宅がふと目の前に現れた。

東京都庭園美術館
(旧朝香宮邸)

「この建物が建てられたのは1933年。もともとは朝香宮邸として建てられたんだけど、今では美術館として使われているんだ」カメは穏やかな口調で語り始めた。

「見て! ガラスで作られた女性像よ。とても神秘的だわ」正面玄関に足を踏み入れたウサギは、目の前に広がるレリーフに思わず心を奪われた。

「これは、アール・デコを代表するガラス工芸家のルネ・ラリックが、この建物のためにデザインしたものなんだよ」

「この建物自体が美術品なのね。しかも、皇族のお屋敷だったのなら、限られた高貴な人たちしか入れなかった場所だったのね」

「この大広間の天井には、40個の電球が整然と配置されているんだ。こうしたシンメトリーなデザインもアール・デコの特徴だね」

大広間

「大食堂にも大理石の柱や壁があって、鉱物的な質感が漂っているんだ。これもアール・デコならではの特徴なんだよ」

大食堂

「あれ、どう見てもパイナップルよね? ここが食堂だから、果物がモチーフなのかしら?」ウサギは天井を見上げ、首をかしげた。

シャンデリア
<パイナップルとざくろ>

「明かりといえば、どの部屋の明かりも本当に魅力的で、つい目を奪われてしまうわ。その光に、心が自然と引き寄せられるの」

妃殿下寝室

「だって、明かりひとつで部屋の雰囲気が全く違って見えるんだもの。それぞれが個性的で、まるで魔法のアイテムみたいだわ」

姫宮寝室前廊下

「これらの明かりもすべて、この邸宅のために特別に作られたんだ。細部にまでこだわりが感じられるよね」カメは静かに明かりを見つめながら言った。

姫宮居間  

「こんなふうに明かりを見ていると、心の奥にも小さな明かりがそっと灯る気がするの」ウサギが優しくつぶやいた瞬間、二人の心にも、ふんわりと温かな光がともった。

何十年も前から邸宅を照らしてきた明かりは、過去と今を静かに繋ぎ合わせ、時を超えて、優しく見守ってくれているかのようだった。

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