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迷える心がたどりつく場所へ

「おはようございます!『ウサギのティースプーン』のお時間です」小さなラジオブースの中で、ウサギはいつものように元気な声で番組を始めた。

「次のお便りは、ラジオネーム『いつも迷ってばかりのカメさん』からです。『ウサギさんは、何かに迷ったとき、静かに考えられる場所がありますか?』というご質問です」

「うーん。私、ほとんど迷うことは無いですね。目が覚めた瞬間から眠るまでずっと…」ウサギは朝の爽やかな目覚めを思い出しながら、ふわりとした笑顔で話し始めた。

「でも、まったく迷わないわけじゃないんですよ。今日は傘がいるかな、とか、何を食べようかな、なんて意外と迷ってるのかもしれませんね」

「もしも何かに迷ったら…思い浮かぶのは、等々力渓谷かしら。都会とは思えないほど静かで、緑にぐるりと包まれている場所なんですよね」彼女はまるで秘密を打ち明けるように、静かに話し続けた。

等々力渓谷

「先日、ふと思い立って、久しぶりに等々力渓谷を歩いてきました。別に迷いがあったわけじゃないんです。ただ、なんとなく、あの静かな場所に身を置きたくなって」

「えっ、ということは、やっぱり、ずっと迷ってなかったってことかしら?」ウサギは苦笑いしながら言葉を続けた。

「そこには『不動の滝』があって、滝の上に佇む不動明王の姿を見ていれば、迷いなんてあっという間に吹き飛んでしまいます」

不動明王と不動の滝

「弘法大師の幼い頃の姿をした稚児大師もいらっしゃるんです。心の中でそっと会話してみるのも、いいかもしれません」

稚児大師像

「みなさんも、自分だけの静かに考えられる場所を、ぜひ見つけてくださいね。ご質問、ありがとうございました」ウサギはいつも通りの笑顔で、少しの迷いも見せずに番組を締めくくった。
「それでは、また次回、お会いしましょう」

放送が終わり、静かな余韻がスタジオに残っていた。ウサギはふと、「カメくん、何をそんなに迷っているのかな?」と小さく呟くと、そのまま図書館で待つカメのもとへと駆け出していった。

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