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初夢を駆ける魔法の船
元旦の夜、ウサギは、すやすやと眠りにつきながら初夢を見ていた…。
彼女は不思議な力で動く魔法の船に身を任せ、星の海を風のように駆け抜けていた。ふと振り返ると、地球が遠ざかりながらも、優しい微笑みを浮かべて見送っていた。
船は風のようにスピードを上げ、星々の間を滑るように進んでいく。その軌跡に触れた星の波が、まるでオーケストラのように荘厳な調べを奏で始めた。彼女は耳を澄まし、その音色に身を委ねながら、自分が向かう先の景色をそっと心に描いてみる。
それがどんな場所なのかは分からないけれど、きっと美しい場所に違いないと、心の中で信じながら…。
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やがて、眩い光を纏うピラミッドが姿を現した。その奥深くには、抱えきれぬほどの財宝が眠っていに違いない。それでも、彼女の心を動かすのは、その輝きではなかった。
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次に現れたのは、奇跡のように枝を広げる大きな藤の木だった。紫色に輝く花びらにそっと触れると、それはふわりと形を変え、細やかな紫のリボンとなり、ウサギの薬指にやさしく寄り添うように巻きついた。
「このリボンは、探しものを見つけるための、小さなお守りなのね…」彼女は顔を上げると、静かに藤の木を見つめた。
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いつの間にか、ウサギは星座を縫うように走る列車に身を預けていた。窓の外には、無数の星々が指先に触れそうなほど近くに輝いている。
「これほど星が瞬いているのだから、きっと探しものは見つかるはず…」彼女の瞳は、迷いなく前方を見つめ、その光の先に希望を宿していた。
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ふと、ひときわ青く美しい星が、ウサギの瞳に映り込んだ。「あの星…きっと、あそこにあるのね」そう呟いた瞬間、汽車はまるで彼女の思いに応えるように、高らかに汽笛を鳴らすと、静かに進路を描き直した。
その星に降り立つと、光を纏った馬車がそっとウサギに微笑んだ。それはまるで、遥か昔の物語から抜け出し、彼女の到着をずっと待ち続けていたかのように、ただ静かに、そこに佇んでいた。
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「ウサギの初夢」後編へ続く