りんごって何者なの?
紅茶専門店を飛び出したウサギは、そのまま走り続け、ようやく図書館に辿り着いた。
息を整える間もなく窓を見上げると、まるで運命の糸に引き寄せられたかのように、カメと視線が絡み合った。
目の前にやってきたカメと目が合うと、ウサギは大きく息を吸い込んだ。そして、「りんご」に秘められた謎について、想いを込めて熱く語り始めた。
「りんごは、ただのりんごだと思ってたの。でも…違うみたいなの」ウサギは瞳を揺らしながら、そっと言葉を紡いだ。
「それなら、一緒に確かめに行こう」
カメは柔らかな微笑みを浮かべながら、そっとウサギの小さな手を握りしめた。
二人がりんご狩り会場に足を踏み入れると、中央に一本の木が凛と立ち、その枝にはさまざまな銘柄のりんごが寄り添うように実を結んでいた。
会場にはりんごの甘い香りが漂い、人々は心に響く一つを思い思いに探していた。その光景は、まるで小さな幸せのかけらをそっと手繰り寄せているようだった。
「ほら、りんごに見えるでしょ? でもね、あれは大きなサクランボの一部なのよ…」
ウサギはカメの背中にそっと身を寄せ、細い指先でりんごを指さした。
「僕には、普通のりんごにしか見えないけど…」 カメはりんごから目をそらし、優しい眼差しでウサギの方を振り向いた。
ウサギは魔法が解けたよう微笑んだ。
「そうよね、裏側がみかんだなんて、そんなことあるわけないわ…。でも、なんだかほっとしたらお腹がすいちゃった」
「それでも…中身がぶどうゼリーだったりしないわよね?」ウサギはどこか夢見るような瞳でりんごを見つめた。
「ちゃんとりんごでよかったわ。でも…待って、このりんご…もしかして私のこと、好きなのかもしれない」
いつもとはどこか違う様子のウサギを、カメは静かに見つめていた。 りんごの前で頬をほんのり染める彼女の姿は、まるで不思議な夢の中にいるようにみえた。