ブリキのおもちゃの物語
山手西洋館を巡っていると、カメの視界に一つの案内板が飛び込んできた。道の片隅にひっそりと置かれたその案内板には、手描きの優しい文字が綴られていた。
「ブリキのおもちゃ博物館?」
その看板を見た彼の心の中に、一瞬で好奇心が芽生えた。気がつくと、彼は隣にいたウサギの手をそっと握りしめていた。
「行ってみようか」
カメの言葉にウサギが微笑むと、二人は自然に足を進めた。示された道を歩いていくと、やがて古い洋館の前にたどり着いた。一瞬息を止め、意を決して扉を開けると、そこは一面ブリキのおもちゃの世界だった。
館内に足を踏み入れたカメは、その一つ一つに目を奪われた。まるで全てのおもちゃが彼に話しかけてくるかのようだった。
「この辺りの西洋館がまだ使われていた頃、子どもたちが遊んでいたおもちゃだね」とカメは静かに言葉をつくった。
「そうね。あの頃の子どもたちは、きっと夢中になって遊んでいたのね」とウサギは彼の横顔を見つめ、優しく微笑んだ。
「ブリキのおもちゃたちも、西洋館とはまた違った風に、時の流れを問いかけてくるね」カメは静かに呟いた。
ブリキのおもちゃたちに囲まれ、そのひととき、二人は過ぎ去った時代の中に身を委ねていた。古びたブリキのおもちゃが静かに語りかける物語は、二人の心にそっと温かな響きを届けていた。