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小さな怪獣

ある昼下がりのデパートにて、
「いーーーやーーーーーー!!!」
そのチビ怪獣は突然に現れた。
小さな体から発せられる澄んだ威力が
フロア全体を次々と飲み込んでいくかのように。

このフロアは主に婦人雑貨を扱う
つまり、オシャレに敏感なマダムたちの
アップデートの場所である。

照明も特別感の演出のために暗くしてある
だから
小さな身体にはいささか重苦しく感じるのだろう

そして、昼下がりの彼らがお眠の時間に
「いらっしゃいませ!」
「ご試着いかがですか?」
などの雑音はきっと不快に違いない

そして、
店員としては、一つでも多く買って欲しい、
消費者側としては、良いものを自分で選別して
買いたい、流されてたまるか!という
思惑が張り巡らされるこの空間は
敏感な小さきものたちにとって
さらに嫌なものとして感じられるのだろう

そして彼らはチビ怪獣へと変身を遂げる
大きな声で泣きながら
自分の主張をしっかりとするのだ

しかし、周りの大人はうるさがるものもいる
自分だけの時間を騒がしく邪魔されて敵わんと
あからさまな不快顔になるものもいる

だが、この場所に一日いる私にとっては
「あぁ、今日も元気だなあ、
 そうだよね、この雰囲気、なんかやだよね、
 お姉ちゃんもわかるよ、その純粋さを絶対に
 無くしてほしくないなぁ」と
思うのである。

正直な話、私はこの場所において
双方の駆け引きでどちらかに優越がつくことに
違和感がある。
海外に行ったときにあいさつをお互いに返す、
横暴な態度を取らない、など
消費者と売り場の相互努力で空間が
形成されていることが嬉しかった。

あぁ、こういう場所だったらもっと良い時間を
過ごせるのだろうなぁと思う。

だからこそ、
その空間の違和感をはっきりと示す
小さき怪獣に私は気持ちを代弁してもらえてるようで
感謝とある意味安心もするのである。

小さきものたちよ、今日もありがとう✨

#チビ怪獣 #素直な気持ち #代弁者 #安心

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