身近なとろみを測ってみた
こんにちは。hayato(@kimamareha_blog)です。
今回はとろみについて疑問に思ったことをnoteにまとめました。
その疑問とは簡単に言えば、『とろみ』という表現が曖昧だということです。
日本摂食・嚥下リハビリテーション学会によるとろみの分類はあるのはあるのですが…。
★必読:日本摂食・嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類 2013
大まかに『薄いとろみ、中間のとろみ、濃いとろみ』と分けられており、何となく使いづらさを感じていました。
これらの表現では客観性に欠け、とろみの統一を図りにくいですね。
まあ、増粘剤を用いたとろみであれば、それをある程度まで統一する方法はあるのはあるんですが。
匙(さじ)の大きさを統一したり、秤(はかり)を使うなどすればいいだけです。
つい先日、嚥下障害のある患者さんから「〇〇スープ(商品名)なら大丈夫かな?」と質問され、それに答えることができませんでした。
ポタージュスープや煮汁などの市販のもので既にとろみが付いている物のとろみが、どの程度なのかをイメージしにくかったのです。
増粘剤でとろみをつけた水分とスープを目で見て、同じくらいのとろみかどうかを比較するのはそれこそ客観性に欠けてしまいます。
不確実な情報を伝えることはできず、「これなら安全に飲むことができますよ。」という指導ができずに困っていました。
そこで少しでも客観性を持たせるためにある道具を購入しました。
使用器具と計測方法
先ほどの学会分類2013のLST値なるものを使用します。
計測のために、さらや株式会社の『簡易とろみ測定板』を用います。
【公式ホームページはこちら】
この方法はラインスプレッドテスト(Line Spread Test;LST)と言われます。
計測の方法について紹介します。
1.水平な場所にシートを置き、直径30mmのリングを円の中心に置きます。
2.そのリングに20mlの測定したい溶液を入れます。
3.リング内で液体の流動を止めるため 30 秒間待ちます。
4.リングを持ち上げ、30 秒後に、溶液の広がりを計測します。
5.シートには6方向に目盛がついているので、その6点の値を計測して、平均値(LST値)を算出します。
【重要】このnote注意点
今回、様々な商品のLST値を計測する目的でnoteを書きました。
計測条件については記載していきますが、その値は正確性に乏しいことにご注意下さい。
1.LST値の基準に関する注意
学会分類2013のLST値は、キサンタンガムをベースとしたとろみ調整食品で水にとろみ付けした試料から検討した値です。
段階1:薄いとろみ(LST値 43〜36)
段階2:中間のとろみ(LST値 36〜32)
段階3:濃いとろみ(LST値 32〜30)
なので本来、デンプン系やグアーガム系の増粘剤や市販のスープや片栗粉などによってつけられたとろみを使用して計測した値はこのLST値の基準とは異なります。
使用する際は目安として用い、他の評価と併せて総合的に判断しましょう。
2.とろみは温度や時間、その他の環境に左右される
例えばデキストリン(デンプン系増粘剤)を主原料としたヘルシーフード株式会社のトロミパワースマイルでは温度が低いほど強くとろみがつきます。
また、液体の塩分量や時間経過にとろみの強さが影響するとも言われています。
時間の経過とともに高値を示すことから硬さは増粘剤の濃度,時間に比例し,温度に関しては10℃で高値を示し,温度の低下に比例する.
※大﨑 雅哉,中山 優子:増粘剤の調理特性に及ぼす濃度・温度・時間の影響,桐生大学紀要.第28号 63-66 2017 より引用
様々な条件によってとろみの強さが変化していくので、大まかな目安としての閲覧をお願い致します。
各増粘剤の特徴
先ほどキサンタンガム系やらデンプン系という増粘剤の名前が出てきましたので各々の増粘剤の特徴を簡単にをまとめました。
この記事を読んだ医療従事者以外の方へ
この記事は医療従事者の方向けに書いた記事ですが、それ以外の方が見る可能性もあるので一応注意点を書いておきます。
まず、食べる人によって適切なとろみの強さが異なります。
しつこいようですが、今回示すLST値はあくまでも目安として利用して下さい。
また、とろみを強くつけすぎたものを食べると、のどに詰まる恐れがあります。
とろみは人それぞれ適切な『程度』があり、その適切な『程度』を判断をするのは容易ではなく、判断を誤ると生命に関わる可能性があります。
★重要★
実際にとろみ剤を使用する際には専門の医師、歯科医師、管理栄養士、言語聴覚士等にご相談の上、適切にご使用ください。
株式会社クリニコ 「つるりんこQuickly」
※製品の情報・公式ホームページはこちら
計測条件
個包装タイプ(3g)の半分量(1.5g)を加え15秒かき混ぜ、2分間常温で放置したものを使用
結果
LST値は42.3
味の素株式会社 「クノール®カップスープ」
※製品の情報・公式ホームページはこちら
計測条件
一袋を150㎖の熱湯を加え15秒かき混ぜたものを使用
結果
LST値は47.1
終わりに
簡易的に視覚的にも分かりやすくとろみを計測することができるので、ご家族様やとろみを使用する患者様への指導の一環として用いてみても良いのかなと思います。
参考になれば幸いです。
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