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「百田新党」に期待して良いか
「百田新党への期待と注文 門田隆将氏、島田洋一、荻原博子氏が語る 「対中姿勢」「突破力」「国政政党」」
(夕刊フジ)
2023年9月現在、日本の国政政党に保守は一党も存在しない。
自民党は保守という体になっているが、実態は全然違う。自称保守の方々がやたらと礼賛する高市早苗氏でさえ、完全な社会主義者である。
単に国防論や靖国参拝への考え方が大筋間違っていなければ、後は何でも良いと言うのだろうか。保守の本質を勘違いした自称保守を見ていると、日本人の政治思想は最早修復不能なのではないかとすら思えてしまう。
さて、百田新党であるが、百田尚樹氏や有本香氏について、私は別に悪い印象を持っている訳では無い。更に言えば、自称保守の人達にしても保守であろうとする心意気は認める。(※補足①)
だが、政党を立ち上げる、もっと言うと政治家になろうと言うなら別である。
その1:原発
「将来的には無くすべきだ」「放射性廃棄物を100年200年先の子孫に残してはならない」
百田氏が過去に行った発言である。
断っておくが、何も発言を切り取ろうというのでは無い。遠い将来にはという意味で語られた内容の一部であり、原発再稼働を早急に実現すべしという主張の正しさは論を俟たない。
では、「100年200年先の子孫に残すべきでは無い」のか。
答えは否である。100年200年先の子孫からしてみれば、余計なお世話といったところであろう。
百田氏は放射能を恐れるべきと考えているのだろうか。原発事故に由来する死者数は諸説あるが、その中で純粋に被曝した事が原因による死者数はゼロである。
更に、年間 100 mSv 以下の微量な“被曝”なら、寧ろ健康にポジティブな影響を与えるというデータが厳然として存在する。(※補足②)
放射性廃棄物を100年200年先の子孫に残すことは、大した問題では無い。寧ろ、よく分からない理由で原発を悪しとした実績を残す方が、将来世代にとって遥かに大きな負債となるであろう。
東北の震災と津波によって福島第一原発で発生した“軽微な”事故は、日本の原発が如何に堅牢で安全であるかを世界に知らしめた。
本来なら「どうだ見たか!」と、「これが日本の技術だ!」と喝采を挙げて然るべきであり、国内においてはガンガン原発を稼働させ、安価な電気料金を背景に力強く震災復興と経済成長に邁進し、国外に対してはバンバン原発を輸出し、それらの国々と良き友人、良きライバル関係を築く。
その様になっていた筈である。
それが真坂の自虐ネタ扱いなのだから、情けない事この上無い。
自虐ネタに堕とした左翼に対し、百田氏の様な考え方の人間が対峙出来るか? 私は無理だと思う。
その2:所得再分配
「今回のコロナウイルスで収入が減った国民のために、国民全員にお金を給付する話が出ている。それは賛成だが、生活保護の人に給付金を出すのは反対!」
百田氏の発言だが、社会主義者丸出しである。
何が問題なのか。
生活保護の人に給付金を出すなと言ったのが問題なのか。
いや、これは正しい。
生活保護受給者に更なる給付金など、それこそ屑の発想である。
問題なのは、武漢コロナウイルスで収入が減った国民の為に政府が給付金を出す事を、「賛成」してしまっている事である。
本来なら一も二もなく全否定しなければならない。
こういった、「政府が徴収して再分配する行為」が良い結果を齎した事例は、有史以来存在しない。(良い結果を齎した“体”にはなっているが。)
百田氏はこの様な事実を知っているのか。知っていてこの様な発言をしているのか。それとも、知らずに発言したのか。何方にせよ話にならない。
政府というのは絶大な権力を有する。故に、機能を限定しなければならない。一度でも一例でも所得再分配的な政策を容認したら、後はなし崩しである。
確実に利権が生まれる。利権に群がる輩が発生する。利権を拡大しようとする。それを見た者が別の利権を作ろうとする。片や所得再分配的な手法を容認し、もう片方では容認しないなど不可能である。
結果起こるのは、増税増税また増税。損をするのは利権とは無関係な大多数の一般大衆である。
一度でも所得再分配を許せばタガが外れる。故に、政府がやって良いのは「減税」である。
断言するが、左翼が叫ぶ「減税」は単なる人気取りである。自分が政権を取ったら絶対に減税などしない。何故なら、「敢えて一度徴収してから分配」という形を採らないと、利権は成り立たないからである。
武漢コロナウイルス祭りによって所得を減らした人達への補助が本当に必要なのだとしたら、やるべきは「(一度徴収した税金の一部を)給付」では無く「減税」である。
その様な指摘を出来ない百田氏が、増税モンスター左翼と対峙出来るか? 私は無理だと思う。
有本香氏に期待するしか無いが、この方も若干弱い気がしてならない。
氏の発言である。
この流れから北方領土を取り返す策を考えよ、と言うと、意識高い系な皆様が「右翼ガー」「国連憲章違反ガー」と青筋立ててやって来ます。誰も「武力侵攻(力による現状変更)しろ」とは言ってないのに。想像力が逞し過ぎるのか、例の「軍靴の音が〜」のように幻聴症状がおありなのかはわかりませんが。
「誰も「武力侵攻しろ」とは言っていないのに」とある。何故に武力侵攻も視野に入れろと言わないのか? という事である。
北方領土は日本固有の領土なのだから、取り戻さないという選択肢は有り得ない。(※補足②)
日本はこれまで延々と交渉を重ねてきた。「ニ島だけでも先ずは」などという見せてはいけない妥協姿勢まで見せた。
その結果ロシアから頂いたのは、「北海道の権利はロシアが有する」という“バカでも分かる”意思表示である。単に「返さない」と言うよりも強力且つ明確な返答だと言えよう。
この様な相手に対し、単に圧倒的な武力を保有・配備するだけで翻意を促す事が出来るかというと、かなり怪しい。
「どうせ攻撃して来ない」と見透かされれば、それこそ本当に徹底した殲滅作戦しか選択肢が無くなってしまう。
日本にとって最優先は、日本人の命を可能な限り失わない事と領土を回復する事である。その過程でロシア側にどれだけの被害が出ようが知った事では無いが、そちらについても少ないに越した事は無い。
圧倒的な武力を背景とした交渉だけで返還が叶うのか。
ロシア東部の重点拠点を巡航ミサイルで沈黙させ、コルサコフ市を焦土にすれば戻ってくるのか。
ウラジオストク市を海上封鎖しつつ、ユジノサハリンスク市を初めとした全ての北方領土諸都市を絨毯爆撃した後、日本軍を展開して掃討作戦までやらんとイカンのか。
更には戦意を挫く為、ノヴォシビルスク市当たりに原子爆弾を落としてやらねば駄目なのか。
どの程度で済むかは日本人の姿勢と覚悟次第であるが、いざ戦闘状態になれば、やはり日本側にも被害が出る。だからこそ、「コイツらはやる時はやるぞ・・・」と思わせなければならない。
保守の定義とは何か。
支那や北朝鮮や南朝鮮に強気な態度を取る事か?
靖国参拝を躊躇する為政者を批判する事か?
左翼メディアの反日報道を糾弾する事か?
国防論を間違えない事を言うのか?
そうでは無い。
「保守」とは、先人が積み上げてきた歴史や文化に敬意を表し、それらが示す事実を正しく理解する事である。
歴史、文化、それらが示す確固とした事実。これらは足掛かりである。足掛かりの上に立つ者は更なる高みを目指し、足掛かりを否定する者は代わりの足場を探して右往左往するか、その場で無様にピョンピョン飛び跳ねるのみである。
百田新党であるが、百田尚樹氏や有本香氏について、保守であろうとする心意気は評価出来る。
だが、確固たる保守でなければ政治家としては不十分と言わざるを得ない。
今は期待して良い。
だが、この先果たしてどうか・・・。
※補足①:保守であろうとする心意気
日本第一党という政治団体が存在する。
党首を務める桜井誠氏であるが、数年前に東京都知事選に立候補した際、やたら攻撃的な言葉を交えつつ、自身の政策には随分と自信がある様であったが、真顔で「10万円の補助金を都民全員に支給( ̄口 ̄)クワァ!」と言い放っていて、ズッコケそうになった。
思いっきり社会主義じゃねぇか!という事である。
ところで、この人とか高市早苗氏であるが、政治家である以上今の思想では話にならない。国防論の方向性が概ね間違っていなければそれで良いというものでは無い。
だが、もしも政治家で無いのなら、保守であろうとする心意気は認めて良い人達だと思う。
※補足②:領土
人は帰属する国の庇護失くして人権の保証された人生を謳歌する事は出来ない。
国際社会というのは暴力とプロパガンダがモノを言う無法地帯であるから、人が人権を保障されたいと思ったら、自由で民主的で資本主義に則った社会を実現する国に帰属するしか無い。
国とは政府では無い。
国とは、国民、領土、主権から成るものである。
その内の「領土」が奪われているのなら、取り戻さないという選択肢は存在せず、相手に返還する意志が無いのなら、最悪の場合として武力行使も当然有り得るという事である。
※追記①
玉音放送をご存知だろうか。
全ての日本人が知るべき内容であるが、更に言うと政治を志す者であれば、知るだけでは不十分である。体現者でなければならない。
玉音放送について、他の方が良い記事を書いておられた。勝手ながらリンクを貼付させて頂く。
※追記② ( 2023.09.20 )
「日本保守党」に正式決定した様である。
早速“いわゆる”保守界隈で話題になっている様だが、前述した様に今のままでは駄目である。
X(旧Twitterのこと)のフォロワーがどうのとニュースになっているが、そのフォロワーの何割が保守の本質を正しく理解出来ているのか。
百田尚樹氏や有本香氏は、場合によってはその様な支持者の意に反してでも保守の本質を理解し、本当の意味での日本“保守”党を築いて欲しいものである。
https://www.soumu.go.jp/senkyo/seiji_s/seijishikin/contents/SS20221125/3194000004.pdf