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【短編小説】勝UMA投票 MySweetHome独歩シャドー

「お宮さんのひとかい」
 後楽園のウインズで煙草を吸っていると、傍にいた見知らぬ老人が話しかけてきた。
「いいや、全く関係が無い」
 俺は笑って返す。
 耳にぶら下がっているピアスは確かに仏具の様なピアスで、丸い飾りの下に赤い紐が幾筋も垂れ下がっている。


 確かにお宮さん、と言う感じもするが作業着を着ていてそれもあるまい。老人は相変わらず笑ったままだった。
 俺は煙草を持っていない方の指で耳のそれを弾いて「これは友達が作ってるんだ」と言うと、老人は我が事の様に嬉しむ顔で笑った。
「どうだい、今年は」
 俺は老人の手元にある投票券を見ながら言った。
「駄目だよ、大きく勝ったレースもあるけどガミったレースも多い」
「そうか。俺もまぁそんなもんだよ」
「堅く勝ったレースは勝てるけどな、少しでも夢を見ると駄目だ」
「俺は夢見てばっかだからな、ちっともだ」
「穴党はツライな」
「まぁ覚悟の上だよ」 


 どうせ中央のUMAが勝つんだ、そんな事は分かっている。
 だがそんな馬券を買ったって面白くない。中央のレースとは違った濃密な熱狂を吸い込む。
 本当に生活が懸かっている、そんな気配のする人間たちの背中を見つめながら俺は煙草を灰皿に押し込む。
 砂の上を走る色々なUMA。
 ラスプーチンだとかマイケル・ジャクソン、鼻を無くした象だとか首の短いキリンなんかが一斉に走り出す。
 道鏡が自分の陰茎に足を引っかけて転んだところで客席から大量の投票券が舞った。 

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